貿易戦争、人知を超える人工知能、気候変動、そしてパンデミック──。何が起きてもおかしくはない予測不能な時代に突入し、企業はこれまで解いたことのない難題を突き付けられている。しかし、ニッポンの製造業はこれまで何度も危機を跳ね返してきた。新時代に合わせたサプライチェーン再構築、イノベーションに挑戦する企業、そこで働く人々が変身していく様を追いかける。(写真:PIXTA)
シリーズ
インダストリー羅針盤

90回
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FA機器の雄SMC、1兆円企業へカギはBCP 岩手に新拠点
工場自動化(FA)を支える空気圧縮器で世界最大手のSMCは、主要サプライヤーを集めた生産拠点を岩手県遠野市に新設する。SMCは災害リスクに加え、後継者問題や人材不足などの課題を抱える中小サプライヤーの現状に危機感を持つ。…
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セイコーが志す第2の創業 医療やインフラ… 社会課題の解決役に
顧客や社会の課題を解決する「ソリューションカンパニー」への転換を打ち出したセイコーホールディングス(HD)。時計、デバイス、IT(情報技術)サービスといった従来の事業の枠を超えて、技術や知見を結集しようと動き始めた。狙い…
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セイコー、脱・時計頼みへ 覚醒したIT子会社、合言葉は「自燃」
創業141年を迎えたセイコーホールディングス(HD)が脱「時計頼み」を急いでいる。目指すのは、顧客や社会の課題を解決するソリューションカンパニーだという。DX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進め、第2の創業に挑…
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グーグルやマイクロソフトも重宝 しぶとく生きる日本製磁気テープ
かつて音楽用カセットテープやビデオテープに用いられていた磁気テープ。後発のハードディスクドライブ(HDD)などにすっかり駆逐されたかと思いきや、コンピューター用の記憶媒体として現在も顧客を獲得し、米グーグルや米マイクロソ…
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出光興産が山口で精製停止 細る需要、石油元売りは共闘の時代に
出光興産は2024年3月をめどに、子会社が山口県で運営する製油所の精製機能を停止すると発表した。石油製品需要が想定以上の勢いで減少。脱炭素の流れで回復は見込めないため、生産能力を削減する。石油元売り各社が縮小均衡へと動く…
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苦労人新社長が描く帝人の未来 自動車「ティア1」はゴールにあらず
4月、8年ぶりにトップが交代した帝人。新たに社長兼CEO(最高経営責任者)に就いた内川哲茂氏は、入社から数年で当時としては異例の顧客企業への出向を経験したのを皮切りに、買収した海外企業との事業統合や国内工場閉鎖など数多く…
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35日間無人操業に成功 横河電機、AIで切り開く製造業の未来
制御・計測システム大手の横河電機が、AI(人工知能)による製造業の「自律化」へ歩を進めている。化学プラントの完全自動操業や、模擬プラントの遠隔制御に成功した。システムの納入先である顧客企業で大幅な省人化や製品の均質化、経…
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トヨタは大規模減産免れる 愛知の漏水問題から考えるBCP
5月中旬、愛知県豊田市にあるトヨタ自動車の工場が一時生産停止に追い込まれた。理由は車載用の半導体不足でもなければ、新型コロナウイルスに伴う中国・上海の都市封鎖(ロックダウン)に起因するサプライチェーンの寸断でもない。イン…
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中国勢に戦略案件さらわれる 住友鉱山、「非鉄メジャー」遠のく
非鉄分野でメジャーの仲間入りを目指す住友金属鉱山のインドネシアでの戦略プロジェクトがお蔵入りとなった。ブラジル系企業と合弁で年産能力4万トンのニッケル製錬所を設けることを検討してきたが、交渉をまとめられなかった。プロジェ…
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現場発・世界最大級の臨床検査施設が稼働 ロボット活用でほぼ無人
「検査を止めるな」。血液検査など受託臨床検査最大手のH.U.グループホールディングス(HD)が、約850億円を投じた新たな検査センターを稼働させた。広さは実に東京ドーム2.7個分。自動化を徹底しており、時間にして検査の9…
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製造業、高揚感なきV字回復 20年ぶり円安水準も先行きに不安
円相場が対ドルで20年ぶりの円安水準となっても、輸出主体の製造業は先行きへの警戒感を緩めない。世界景気の腰折れ懸念に加え、輸入物価の上昇で日本経済が打撃を被る「悪い円安」への不安が募る。受益者とみられてきた製造業で「円安…
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三井・三菱が一歩リード? 財閥系化学、原材料高の価格転嫁なるか
国内の財閥系化学大手3社は、2023年3月期(今期)が最終減益になるとの見通しをそろって明らかにした。原油をはじめとする原材料価格の上昇を受け、好調だった前期から一転、難しい1年になる。製品価格への転嫁によってコスト増の…
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日本製鉄、過去最高益も慢心なし 今期もトヨタと激しい価格交渉に
日本製鉄がV字回復を果たした。2022年3月期連結決算は純利益(国際会計基準)が12年の旧・新日本製鉄と旧・住友金属工業の経営統合後で最高を記録した。同社が業績改善への「一丁目一番地」としていた値上げの浸透が目に見えて表…
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ブラザー、イミ消費に託すミシン復活 コロナ特需後へ若者と接点
1908年にミシンの修理業として産声を上げたブラザーグループ。ミシンの国内市場は長く縮小傾向が続いたが、新型コロナウイルス禍の巣ごもりやマスク需要などを背景に出荷台数が急増した。盛り上がりを一過性にしたくない――。そんな…
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三菱重工、新型原子炉で水素量産 鉄鋼メーカーの脱炭素後押し
三菱重工業が次世代原子炉を使った水素の量産に乗り出す。原子炉で発電しながら、同時に原子炉から出る熱を活用して水素を製造する。2030年代前半の実用化を目指す。鉄鋼メーカーに水素を供給し、二酸化炭素(CO2)を排出しない「…
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住友化学、原油高で一息つく「お荷物」 誤算のサウジ2兆円プラント
総事業費約2兆円の石油化学プラント「ペトロ・ラービグ」。資本参加する住友化学にとって「お荷物」といわれ続けてきたが、ここにきて業況が好転。その遠因となったのはロシアによるウクライナ侵攻だ。
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「アグレッシブさ失っている」 三菱ケミカルHD社長、2年目の焦燥
4月に新組織体制へと移行した三菱ケミカルHD。傘下の事業会社が担ってきた意思決定機能をHDに集約し、グループ一体での事業運営を図る。そうした変革の裏側にあったのは社員の「自信喪失」への危機感だ。
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大日本印刷、スマホで鍵開閉「デジタルキー」 車のソフト化に商機
印刷大手の大日本印刷(DNP)は情報管理で培ってきた「安全性」を強みとして事業領域を広げてきた。足元で注力するのが、ソフトウエア化が進む自動車の分野だ。
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地震大国を襲った「首都圏停電」危機 原発再稼働は必要か?
地震大国、日本が電力危機に襲われた。3月22〜23日に東京電力ホールディングス(HD)と東北電力管内で起きた停電リスクで露呈したのは、節電要請だけでは「焼け石に水」であり、供給面でも他社からの電力融通と再生可能エネルギー…
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ウクライナ危機でさまよう衛星会社 日本はロシアの代役果たせるか
ウクライナ危機が宇宙ビジネスにも波紋を広げている。「ソユーズ」などロシアのロケットや同国管轄内のカザフスタンの宇宙基地は各国の人工衛星打ち上げに使われてきたが、予定通り打ち上げができないリスクが高まっている。すでに打ち上…
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小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明
「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たや…
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徹底予測2021年 底打ちか奈落か
日本経済の節目の年として幕を開けた2020年は、誰もが予想できない最悪の1年となった。すべての始まりはコロナ禍だ…
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クルマ大転換 CASE時代の新秩序
総付加価値額が450兆円ともされる自動車産業の構造が変わり始めた。GAFAやEVスタートアップ、ソニーなどが新た…
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不屈の路程
話題の経営者や気鋭の起業家はいかにして自らの経営を確立するに至ったのか。そこにたどり着くまでの道のりは決して順風…
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菅野泰夫のズームイン・ズームアウト欧州経済
ロシアを足掛かりに、欧州経済・金融市場の調査を担当して、既に十数年の月日がたちました。英国の欧州連合(EU)離脱…
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1000年企業の肖像
日本は創業100年以上の企業が多くあり、世界一の長寿企業大国として知られる。その中には創業1000年を超えると伝…
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10 Questions
いま、世の中で起こっていること。誰もが知りたいと思っていること。でも、ちゃんと理解できていないこと。漠然と知って…
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河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは…
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ファクトフルネス思考
「データを基に世界を正しく見る習慣」を紹介した書籍『ファクトフルネス』は、日本で90万部を超えるベストセラーとな…
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大西孝弘の「遠くて近き日本と欧州」
日本の読者にとって欧州のニュースは遠い国々の出来事に映るかもしれない。しかし、少子高齢化や低成長に悩み、企業の新…
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グルメサイトという幻
食べログ、ぐるなび、ホットペッパーグルメ──。外食店探しに欠かせない存在となったグルメサイトの地位が揺らいでいる…
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フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える
この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつか…
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ファストリ、異次元の経営
コロナ禍の混乱からいち早く抜け出したファーストリテイリング。破綻が相次ぐアパレル業界にあって、なぜユニクロだけが…
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テスラが仕掛ける電池戦争
日本でも2030年代半ばに新車販売でガソリン車をゼロにする方針が打ち出されるなど、各国の環境規制強化により普及段…
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70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄
従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保することを企業の努力義務として定めた、改正高齢者雇用安定法が2021年…
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