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 新型コロナウイルスによる深刻な影響が町工場を襲っている。東京・大田区で自動車向けの部品加工を請け負う町工場の社長は「現時点では(売り上げへの影響は)2割減。これからどれくらい落ちるのか分からない。状況によっては、最悪、休業して工場を止めることも考えなければいけない」と不安げに話す。

 東京商工リサーチ(東京・千代田)によると、4月22日17時時点で新型コロナウイルス関連の経営破綻は、全国で累計81件に達した。その多くは宿泊業や飲食など。インバウンドの減少や外出自粛要請により売り上げが急激に落ち込んだ観光サービス業が一足先にダメージを受けた格好だが、製造業への影響も時間差で端々に表れはじめている。

 例えば、自動車メーカーと下請け企業の間では、一般的に部品の発注は1カ月程度先までは「確定受注」とすることが多い。そのため3月時点では受注残もあり、下請けへの影響は限定的だった。ただ、今週に入りトヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど大手自動車メーカーが次々に生産調整の延長や追加を発表。元請けが大規模な減産計画を出したことで、中小零細の部品メーカーには今後さらに厳しい受注減が待ち受ける。

 影響は自動車にとどまらない。大手アパレルのOEM(受託生産)を手掛ける町工場の社長は、「展示会も開催できず、次のシーズンの受注が悲惨なくらい減った」と話す。暖冬やアパレル不況の影響でそもそも売上高は減少基調。3月、4月の落ち込みは想定内だったと言うが、その上に重なった予想外の事態に大きく肩を落とす。

 こうした中、企業は資金繰りに奔走している。中小企業の借り入れを保証する東京信用保証協会によると、1~3月の保証承諾額は前年同期比81%増の4768億円。新型コロナウイルス関連の保証承諾が約7000件分、2033億円積みあがった。

 いま、多くの企業が厳しい状況に直面していることは疑いようがない。ただ、町工場にはリーマン・ショックや東日本大震災など、度重なるピンチを乗り越えてきた経験がある。この状況を前向きに乗り越えようとする彼らのたくましさも、また噓ではない。

「うちでダメなら、他社はみんな死ぬ」

 「何とかなると思っている。もし、うちでダメなら、他社はみんな死ぬ。それくらい真面目に取り組んできた自信があるから」。金属精密加工を手がけるダイヤ精機の諏訪貴子社長はあっけらかんと語る。リーマン・ショック時には売上高が9割減少し、「あと2カ月もたない」という瀕死(ひんし)の状態にまで陥った。会社再生のために着手した高付加価値商品へのシフト、着実に社内で進めたIT化、いずれまた不況が来ると見越して準備した手元資金。こうした体力づくりの数々が、この急場でも同社の支えになっている。

 都内の町工場は高まる需要を受け、新型コロナの感染防止商品の生産に乗り出した。墨田区では和興や小倉メリヤス製造所など、複数の縫製工場が洗って使える布マスクの製造に着手。大田区では区の打診を受けた樹脂加工会社が、対面業務などでの飛沫感染を防止するアクリルパネルを受注から2週間で納入した。

 どんな状況でも思考を止めず、今できることは何かを模索することで活路が見えてくるのは間違いない。連載「戦う町工場を行く」では、零細中小企業を取り巻く環境と、迫る危機に立ち向かう町工場の最前線をリポートする。

連載予定

・「工場は止めても、採用は止めない」 ダイヤ精機・諏訪社長の自信(5月1日公開)
・IT化、テレワーク…改革遅れる製造業 今こそ脱皮のチャンス(仮)