マイルドなインフレで経済成長を目指す方針を掲げてきた安倍政権だが、コロナ禍に伴う財政出動や供給不足によって今後を不安視する見方も出てきた。企業業績の向上や賃金増を起点に、好循環の未来図を描いたアベノミクス。「年収2割減時代」が現実味を帯び始めるなか、国民が一定の評価をし期待も寄せた「国主導型の所得増加計画」が揺らぎ始めている。
「朝起きて日本円で1万円分の価値のジンバブエドルが手元にあっても、家を出てタクシーに乗ったり、新聞を買ったりするまで、それが『1万円のまま』なのか、全く分からない。そんな状況でした」
国立民族学博物館外来研究員の早川真悠氏はこう話す。2007年3月から09年1月までアフリカ南部のジンバブエで、早川氏は「計測不能」といわれたハイパーインフレーションを身をもって味わった。

ハイパーインフレとは、物価が極端に上昇する現象で、月間インフレ率(消費者物価上昇率)が50%以上となった状態を指す。ジンバブエでは当時、貨幣の大量供給によって物価がいわば天文学的な水準にまで達し、経済活動や国民の日常生活が大混乱。ジンバブエ政府の統計部局が2008年7月に発表したインフレ率は「月間2600%」、年率では「2億3100万%」に達し、その後、同国政府は公式なインフレ率の公表を諦めた。
「08年末にはパンの値段が列に並んでいる間に2倍になったこともあった」と、早川氏は振り返る。
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