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 自動車は前年比28%減の76万円、電機は20%減の67万円──。経団連がまとめたリーマン危機後の2009年夏のボーナスの妥結状況(大手企業)をひもとくと、減額を意味する白い三角形が並ぶ。この年の夏のボーナスは総平均で17%減。製造業平均だけを見れば2割以上減り、冬も二ケタ減を余儀なくされた。 

09年当時、大企業ではボーナスの大幅カットが相次いだ

 田中さんにとっての「給与減」への恐怖感として、10年前のこのリーマン・ショック時の会社の対応がよみがえる。大手企業ならなおさらのこと、基本給をただちに引き下げる対応はタブーとされ、その代わりに夏冬のボーナスが人件費削減の調整弁となりやすい。

 労使交渉上よく使われる言葉として、業績が良い時は「成長の果実を共に分かちあう」、悪い時は「共に身をかがめ難局を乗り切る」。これから具体的な金額算定に入る企業が多いもようだが、経団連関係者も「後段の『共に身をかがめ……』のフレーズがよく飛び出すのではないか」とみる。民間シンクタンクの予想は今連載で詳述するが、春闘の時点でボーナスの大枠を決めている所でも、業績低迷を理由に金額を組合と再交渉ケースが出てくる可能性がある。

忍び寄る「年収3%減」とその重み

 安倍首相もコロナに襲われた日本経済を「戦後最大の危機」と表現しており、市場には「今後のボーナスの削減幅も、リーマン危機後の対応に匹敵するのではないか」(国内証券アナリスト)との見方が多い。今回、09年の企業が年間で実施したカット幅(削減率)をもとに弊誌で再試算したところ、年収ベースでの賃金カーブは以下のようになった。

 一番下の赤いグラフがそれだ。ボーナスカット前に比べ、今後起こり得る「カット後の年収」はどの世代でもおおむね3%減となる。率としては比較的小さいと見るか、20万円減という金額が大きいと見るか、捉え方は様々かもしれない。が、近年のいわゆる「官製春闘」の下でも、賃上げ率は2%程度だった現実がある。従業員の給与を一律に底上げするベースアップ(ベア)率が1%にも満たなかったことを考えると、コロナによってここ数年の労使の努力が水泡に帰す。そんな表現も可能だろう。

 加えて、20年前の賃金カーブと今後の推計値を再び比べると、「カット後の年収」の水準では、40代から50代にかけて2割近い減額幅(40~44歳、45~49歳ともに17%減)になることが分かった。その意味では、中長期的な視点に立てば、日本の現役世代の働き手は「すでに年収2割減時代」に足を踏み入れているとも言えそうだ。

 デフレ下で実は積み重なってきた「痛みを伴う給与改革」。人材確保や景気回復も見据え、一部の先進企業では近年、前向きな給与増計画が練られ、実践されてきた面があるものの、コロナ・ショックによってその多くにまた暗雲が垂れ込め始めている。さらなる「痛み」に身構え受け入れるしか術はないのか。何か手法はあるのか。感染拡大防止策と併せ、知恵と具体的な行動が必要になってくるはずだ。

[ラインアップ(予定)]

▽大企業社員も住宅&教育破産へ?「年収2割減時代」の戦慄
▽「時代は副業」と民泊挑戦 コロナで借金5000万円の人の今
▽海外で所得倍増リタイアのプチ富裕層 コロナ後の運命
▽ジンバブエ人の警告「インフレで所得増加?馬鹿言うな」
▽年収2割減からの消費回復 昭和30年代からの手紙
──を順次掲載予定です。
(※内容は変更になる可能性があります)

この連載は、北西厚一、山田宏逸、小原 擁、神田 啓晴、が担当します。