年間来場者が3000万人を超えるアジアを代表するテーマパーク、TDR。そこで働く従業員の待遇が、重労働の割には必ずしも高くないことはかねて伝えられてきた。

 炎天下の夏でもいてつく冬でも、「日本一のおもてなし」を要求される一方、非正規労働者は1000円程度の時給制。過去には、着ぐるみショーに出るなどの業務にあたっていた契約社員の女性2人が、過重労働やパワハラで体調を崩したとして、損害賠償を求める訴訟を起こしている。

 こうした状況に同社も対応。16年4月にはアルバイトの時給の上限を1100円から1350円に引き上げ、19年には非正規労働者の3000~4000人を22年度までに正社員にする方針を打ち出した。この場合の月給水準も総合職など正社員よりは低いが、アルバイトよりは厚遇。関係者からは「(待遇改善は)まだまだ不十分」との見方も出る一方、限定的とはいえ非正規労働者の処遇改善に乗り出した同社の動きを評価する声も上がっていた。

コロナは、非正規社員の処遇改善の流れにも水を差す可能性がある(写真:ZUMA Press/アフロ)
コロナは、非正規社員の処遇改善の流れにも水を差す可能性がある(写真:ZUMA Press/アフロ)

 しかし今、そんな流れにコロナが水を差すのは容易に想像できる。休業が1カ月続けば、売り上げが数百億円減るとされるTDR。コロナ禍で社員の処遇改善の優先順位が仮に下がったとしても誰も責められない。

 「今の“夢の国”は、質の高い非正規労働者で成り立っている。なんとかコロナを乗り越え、待遇が上がる流れを維持しないと辞める人が続出しかねない。今は一日も早い終息を祈るだけ」。組合担当者はこう声を詰まらせる。

大企業へのコロナ禍の第一波

 世界中で猛威をふるい続けるコロナ・ショック。中小企業の従業員や個人事業主、フリーランスの間では既に、住宅ローン破産や家賃を払えず廃業など阿鼻叫喚(あびきょうかん)の様を呈しているが、その波は早晩、大企業にも押し寄せる。様々な打撃が懸念される中で、まずその影響が顕在化しておかしくないと思われるのが、オリエンタルランドに限らず、少なからぬ大企業が進めてきた「社員の所得増加計画」だ。

 OECD(経済協力開発機構)などの国際比較で見て、比較可能な35カ国中18位とふるわない日本の給与水準(17年時点)。こうした状況を覆し、グローバルな人材獲得競争にも打ち勝つため、多くの企業が魅力的な給与制度作りに力を入れてきた。もちろんその背景には、給与増加をデフレ脱却の起爆剤としたい安倍晋三政権の方針への呼応もある。

 代表的なのはファーストリテイリング。20年春入社の新入社員の初任給を2割引き上げた。一方、「新卒でも年収1000万円以上」と19年に打ち出したのはNEC。枯渇するIT人材を確保する目的で、学生時代に論文発表などの実績があれば優遇することにしたという。富士通も今年の春闘で初任給1万2500円アップと、電機大手の平均3000円上げを大きく上回る金額を提示し、話題を呼んだ。

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