全3281文字

不動産、年金管理などの資産形成・相続関連サービスを手掛ける信託業界。新型コロナ禍で自分の資産や家族とのつながりへの意識の高まりを受け、各社とも老後を支えるためのサービスに力を入れている。2020年4月、社長に就任した三菱UFJ信託銀行の長島巌氏に、新型コロナウイルスの不動産市況への影響、デジタル化の加速を踏まえた今後の事業展開などについて話を聞いた。

長島巌(ながしま・いわお)氏
1985年慶応大経卒、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀)。証券投資部長、常務、専務、副社長を経て、2020年4月から現職。三菱UFJフィナンシャル・グループの副会長も兼務。57歳。

2020年4月、新型コロナ禍での社長就任でしたが、抱負は。

三菱UFJ信託銀行の長島巌社長(以下、長島氏):コンサルティング力を発揮して日本屈指の金融サービス業を目指したいです。金融業は従来、預金を集めて融資する預貸中心のビジネスモデルが主でした。新型コロナの影響があって少し状況が変わっていますが、今は融資先企業が資金余剰の状態。ですから、金融機関は預貸中心のモデルでは今後成長することは難しいと思っています。特に信託銀行は証券代行、遺言信託などの信託サービスをしていますので、金融業から金融サービス業へ転換しないといけません。人生100年時代、デジタル化、コロナで世の中が急速に変化している中、我々はそれに対応してシルバー向け、不動産などのインフラ関連、情報銀行などのデータビジネスを積極的に進めていきます。

新型コロナの影響による社会変化に対応した新たな取り組みは。

長島氏:非対面取引やデジタル化が急速に進むことを踏まえ、スマートフォンの新しいアプリを今年9月にリリースする予定です。「わが家ノート」というアプリです。利用者が食事内容、血圧数値、歩行情報、脳トレーニング結果などを管理できて、離れている家族がそれらを把握できる機能も付けられます。また、万が一のときに残された家族への財産分与の考えを記す「エンディングノート」のほか、取引している金融機関のID、交友関係、写真などを管理したり、家族にそれらを伝達したりすることもできます。

 コロナ禍で遠くに住んでいる家族に直接会うのが困難になりました。高齢な方であれば、元気なのか、しっかりと生活しているのか、心配な面が出てきます。万が一のことがあった場合、残された家族が本人の金融機関口座を解約する手続きは大変です。さらに葬儀に誰を呼べばいいのかなど、このアプリで管理していれば残された家族は非常に助かります。アプリを通じてある意味、家族との絆をより深めることができるのではないかと思います。我が社としては、ここに相続関連サービスなどを提供します。信託銀のみならず、グループの銀行、証券の顧客にも利用してもらうつもりです。

 今回のコロナをきっかけに、多くの人が家族の絆だけでなく、自分の祖先は誰なのか、自分の故郷はどこなのかなどを真剣に考えたと思います。そうした思いに応えるのにもこのアプリが役立ってくれればいい。アプリ利用者として50万人の達成が目標です。

新型コロナでビジネスのやり方も変わりましたか。

長島:グループとしては金融機能を十分発揮することを目指しています。企業への資金融資、個人の資金支援などです。当社は融資機能をグループの銀行に移行しましたので、融資という形での支援はできませんが、投資関連のニーズがあればお手伝いします。また不動産関連サービスでは、不動産を売却する支援など、法人、個人のビジネスや生活を継続するためのサポートをしていきたいです。あとは社員の安心安全、健康ケアが非常に大事だと思います。弊社のサービスを顧客に提供してくれるのは社員ですから。在宅勤務の環境整備、オフィスで3密にならないような工夫などをしっかりしていきます。