新型コロナウイルス感染症の防疫対策で急速に変化した私たちの日常。大きな不安と引き換えに、社会様式はより良い方向に変革できるのだろうか。これまでも日本は大規模な災害に見舞われるも克服してきた。今回のコロナ禍からはどんな教訓を得たのだろうか。『ハゲタカ』など、独自の視点で社会問題を描いてきた小説家の真山仁氏は、「私たちはコロナに打ち勝ったわけではない。今のところは勝手に助かっただけだ」と指摘する。真山氏に、コロナ禍を奇貨とするために必要な考え方について聞いた。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、私たちの働き方や暮らし方は大きく変わらざるを得ませんでした。今、起こっている変化をどのように見ていますか。

真山仁氏(以下、真山氏):今回の新型コロナの拡大を受けて、政府や財界は「働き方改革が進む」と楽観的に見ているようですが、それほど単純なものなのかなと考えています。なぜなら、私たちは無理やり隔離されていたにすぎず、それは「自粛」という名の「強制」だったからです。急速に起こった変化には、同じく急速に元に戻ろうとする力が働きます。

 「コロナ感染は命の危険がある。だからステイホームしてください」。そうやって強制されただけであり、働き方を変えようと自発的にリモートワークを導入しているわけではないので、多くは従来のやり方に戻ってしまうのではないでしょうか。

真山 仁(まやま・じん)氏
小説家
1962年大阪府生まれ。同志社大学卒、新聞記者、フリーライターを経て2004年『ハゲタカ』でデビュー。同シリーズのほか、『マグマ』『黙示』『そして、星の輝く夜がくる』『売国』『当確師』『オペレーションZ』『トリガー』など、幅広い社会問題を現代に問う小説を発表している。最新刊は、再生細胞による新薬開発に斬り込む初の医療小説『神域』。(写真:都築雅人、以下も)

 確かに「新しい生活様式」が今の段階では必要でしょう。コロナ防疫の生活を経験したおかげで、人と直接会わなくてもできる仕事が分かってきた。でも、人と接しなければできない仕事も多いし、集まれることへの「ありがたみ」も分かってきたのです。

 新しい生活様式が壮大な社会実験だとすれば、私たちはようやく働き方や暮らし方を“自主的に”選べる選択肢を得たところです。だからこそコロナに対応した今のやり方が本当に正しいのかどうか、1つずつ検証しなければなりません。

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