格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションが6月19日に国内の全路線で運航を再開した。4月に就任したばかりの森健明CEO(最高経営責任者)はレジャー需要の回復に手応えがあるようで、「夏は国内線を大増便する」と話す。当面の需要回復が見込めない国際線に代わり国内線に経営資源を集中させる考えだ。

<span class="fontBold">森 健明(もり・たけあき)</span><br />1962年長野県生まれ。東京外国語大学卒業後、全日本空輸に入社し、航空機のオペレーション全般に関わる業務を担当。2011年にA&Fアビエーション(現ピーチ・アビエーション)に入社し、17年に副社長。20年4月から現職。
森 健明(もり・たけあき)
1962年長野県生まれ。東京外国語大学卒業後、全日本空輸に入社し、航空機のオペレーション全般に関わる業務を担当。2011年にA&Fアビエーション(現ピーチ・アビエーション)に入社し、17年に副社長。20年4月から現職。

4月の就任早々、コロナ禍が航空業界を襲いましたが、やっと国内線の全22路線で運航が再開されます。

ピーチ・アビエーション森健明CEO(以下、森氏):全路線の再開は2カ月半ぶりだ。飛行機を飛ばすかどうかは、各地の感染や医療体制の状況に左右される。緊急事態宣言の発令以降、とりわけ医療従事者、保健所など行政、知事らの懸命な努力があってこそで、感謝しかない。

 5月には1日9往復しか便がない時期があり、搭乗率は20%くらいで当然、採算ラインに乗っていない。公共交通機関として全便運休は避け、採算度外視で運航を続けてきた。宣言解除以降、目に見えて感染者が減っていき、予約が入ってきた。もともと解除から1カ月くらい様子を見た後、運航本数を回復させる計画だった。それがたまたま、都道府県をまたぐ移動の自粛要請が緩和される6月19日になった。

消費はなかなか元に戻らないともいわれます。航空サービスの利用者はどれくらい戻ってくるのでしょうか。

森氏:通常時は1日約2万件の予約が入るが、4〜5月は1日1000件くらいが続いた。見たこともない低水準だったが、6月に入り、予約が増えてきた。19日はほぼ全便で搭乗率が50%を超える見込みだ。8〜9月については、例年まだそれほど予約が入らない時期ではあるものの、予約率は例年の水準にだいぶ近づいている。

 利用者に簡単なアンケートをしたが、旅行をしたいという人はかなりいる。長期休暇は決まってハワイなど海外を訪問していたような人も、国内を観光するしかなくなる。国内需要に海外需要が「トッピング」される形で、それぞれのボリュームが下がったとしても、合算すれば国内需要はいつもより増えるだろう。7月22日からは、新型コロナ発生前に国内線で計画していた全便を運航し、8月は計画より2割増便する。

 乗客は、また感染が広がるなどして予定を変更せざるを得なくなる事態を心配している。そこで予約変更や手荷物の預け入れが無料でできるプラン「バリューピーチ」を割引価格で提供し始めたところ、予約が上向いた。割り引きは「ぜひ旅行してください」というメッセージ。ポジティブに捉えてもらえたようだ。

繁忙期の夏季に合わせた新規就航もあり得ますか。

森氏:レジャー需要が見込める都市を中心に、8月に新規就航する可能性もある。もともと国内路線は増やす計画で、それを前倒しして展開する。

国際線の先行きはどう見ていますか。

森氏:国内線は、感染の第2波、第3波が来て一時的に需要が落ち込んでも、状況が落ち着けば比較的需要がすぐ戻ることが期待できる。国際線はワクチンや効果的な治療薬が普及しないと利用に何らかの制限が残る。

 ピーチの、特に海外の利用者は日本での1回あたりの滞在日数が2〜3日、月に2回来るというような、短期間だがよく来日する場合が多い。そうしたときに2週間待機、というようなことになると、何のために来ているのか分からない。当社の国際線の利用者が戻ってくるのはワクチンのような抜本的な対処法ができた後で、そういう時代はあと1年はやってこない。来年の今ごろもそう状況は変わっていないだろう。限定的な再開はいずれするだろうが、本格的な再開はしばらくない。

国際線が飛ばせない分、国内線に注力すると。

森氏:しばらくは国際線に使おうと思っていた機材や乗員などを全て国内線に振り向ける。国内線も国際線も、片道2〜3時間くらいの距離で、共通の機材を使ってやってきた。国際線が厳しければその分のリソースを国内線に回すという調整を、フルサービスキャリアに比べると短時間でできる柔軟性がLCCの強みだ。

 国際線が飛ばせない中、国内線の運航を増やさなければ様々な余剰が生まれる。日本では政府も国内旅行を促す動きをとっており、需要が増えていくだろうという中で、余っている機材や人材を使わない選択肢はない。

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