新型コロナウイルスの感染拡大が国内企業の経済活動にも大きな影響を与えている。厚生労働省によると、解雇や雇い止めは見込みも含めて2万人を超えた。労働者の雇用確保はどうしていくべきか、日本労働組合総連合会(連合)の神津里季生会長に聞いた。

新型コロナウイルスの感染拡大は雇用にも大きな影響を及ぼしています。現状と、今後への影響をどう見ていますか。

神津里季生・連合会長(以下、神津氏):4月の労働力調査によると、国内で600万人近くの休業者が出ています。前月比で350万人増です。失業者という形では、そこまで表れてはいませんが、これは必死にこらえている状況に他なりません。

 そうした中で危機感を持っているのは、政府の動きがとにかく遅いということです。持続化給付金をはじめ、給付という形であろうと貸し付けという形であろうと、手元にお金が届くかどうかということが非常に大事ですが、永田町や霞が関が前近代的なことが災いして、一刻も早く欲しいという人たちに到達していません。

 確かに、休業手当を労働者が申請できるようにするなど、東日本大震災の際の特例を準用するような形を取るなど、踏み込んだ対応をしていることは正しいと思います。でも、これも今後、国会審議を経る必要がある。思い切っていろんな手を打っているんですが、お金がなかなかこない事業者の思いは切実です。言い尽くされた話ですが、雇用の問題を考えたときにスピード感の欠如というのは危機を大きくしかねません。

前近代的というのはデジタル化が進んでいないということでしょうか。

神津氏:デジタル化の話ももちろんあります。先進諸国では納税者番号を使って迅速な対応をしているところがいくつもあります。日本でもマイナンバーを使ってきちんと対応すべきでしょう。でも10万円の特別定額給付金の場合では、マイナンバーでのオンライン申請の内容と住民基本台帳を手作業で照合しているというあぜんとする実態にあることが分かっています。

 コロナウイルスによって明らかになった日本の抱える問題点の1つと言えます。いろんなところに予算をかけたはずなのに、第一線の役場など現場に立脚していなかったことが明るみに出てしまった。そこはしっかりやらなければなりません。第2波や別のウイルスが来たときに、こんな体たらくではえらいことになる。

 そもそもこれだけインターネットを使ったミーティングや講義なども普及しているんですから、国会も同じようにできないのでしょうか。

そうした中で、安倍晋三首相は6月3日の全世代型社会保障検討会議で2020年度の最低賃金引き上げに慎重な考えを示しました。

神津氏:私は最低賃金引き上げの凍結はあり得ないと考えています。ここ数年と同様に上げないといけない。凍結はアベノミクスは何もなかったっていうことの証明。白旗を揚げるのと同じです。

 雇用と賃金が二律背反と考えているのでしょうが、それは働く人の幸せを考えて「労働移動」が当たり前の世界をつくってこなかったからです。