近年、脚光を浴び続けているAI(人工知能)や機械学習の領域。新型コロナウイルスの流行はこうした分野の研究にも影響を及ぼすのだろうか。2018年にNECから事業分離して、シリコンバレーで創業した米ドットデータの藤巻遼平CEO(最高経営責任者)は「現金の有無が技術開発を推進できるかどうかを左右し、3~5年後に大きな差が出る」との見方を示す。開発の担い手となるデータサイエンティストについても人材市場に流出しているとみる。

<span class="fontBold">藤巻遼平(ふじまき・りょうへい)氏</span><br> 2006年NEC入社。11年、シリコンバレーのNEC北米研究所に移る。15年1000人以上いるNECの研究者のなかで6人しかいない主席研究員に史上最年少で選ばれる。18年、データ分析ツールの開発および販売、コンサルティングを事業とする新会社ドットデータをNECから事業分離。CEO(最高経営責任者)に就く。20年、CB Insightsで「Top 100 AI Startups in 2020」に選出される。
藤巻遼平(ふじまき・りょうへい)氏
2006年NEC入社。11年、シリコンバレーのNEC北米研究所に移る。15年1000人以上いるNECの研究者のなかで6人しかいない主席研究員に史上最年少で選ばれる。18年、データ分析ツールの開発および販売、コンサルティングを事業とする新会社ドットデータをNECから事業分離。CEO(最高経営責任者)に就く。20年、CB Insightsで「Top 100 AI Startups in 2020」に選出される。

将来を見据えたAIや機械学習の開発に対し、新型コロナウイルスの流行がもたらす影響をどうみていますか。

藤巻遼平・ドットデータCEO(以下、藤巻氏):AIや機械学習は重要な投資分野だっただけに市場が冷え込んだ影響は大きい。北米では3月に大きなショックが来たばかりで、コロナ禍は始まったばかりだ。シリコンバレーは他地域に比べ在宅勤務の割合が高いので事業自体は落ち着いている。本当にネガティブなインパクトが出てくるのは年後半にかけてではないか。

 AIや機械学習に対する需要自体はなくなっていない。むしろ、自動化を加速するという点でも重要な技術と捉えられている。現実はお金の流れがダメージを受けていて、投資が難しい状況になっている。

 米国のトップベンチャーキャピタリストとも話したが、公開市場が冷え込むことで事業会社が資金を出すコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の資金の出し方が変わる。プライベートエクイティ(PE)にキャッシュはあるが、投資をしても回収できるIPO(新規株式公開)が減る。キャピタルゲインが減ることが結果的にPEの資金の出し方にも波及してくる。

ドットデータとしてはどんな点に注力していきますか。

藤巻氏:自動運転や画像認識ではなく、事業領域に特化しているのが当社の特徴だ。ウェブ上でのデータ処理や購買履歴、製品の販売、財務などのバックオフィスでのAIや機械学習の活用でビジネスをしていて、基本的な方向は変わらない。

 こうしたタスクについてはAIでやる方が、人間が経験と勘でやるよりも精度が高い。AIが得意な領域があるならやらせた方がよい。その流れで投資が進んでいた。ただ、コロナにより減速するとなれば、人材の問題がある。米国の失業率は2桁を超え、事業会社は現金流出を避けようとして人員削減に動いている。給与の高いデータサイエンティストも人材市場に流出している。

 一時的に、AIや機械学習を推進していく先進領域の人材が企業から減って、短期的に開発が減速してしまう可能性はある。一方で潤沢な現預金を持っているところにとってはチャンスともいわれている。新型コロナが流行しているからといって、AIや機械学習の重要性が変化するわけではない。お金を持っていて投資できた人とそうでなかった人とでは3~5年後に大きな差が付いてしまう。既存のメンバーで生産性を上げながら、機械学習を使える人材を増やせるという意味では、ドットデータの分析の自動化は鍵になるソリューションと言える。

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