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 LIXILグループが、懸案だったイタリアの建材子会社ペルマスティリーザを米投資会社に売却する。ペルマは、LIXIL創業家の潮田洋一郎氏が2011年の買収を主導し「宝石」と称していたが、瀬戸欣哉社長兼CEO(最高経営責任者)は経営リスクが大きいとして2016年の社長就任当初から売却を検討してきた。ペルマを巡る瀬戸氏と潮田氏との対立は、2018年10月末に瀬戸氏がCEOから解任される一因となった。瀬戸氏が2019年6月の株主総会を経てLIXILの経営に復帰すると、再び瀬戸氏はペルマ売却へと動いていた。

 売却交渉は新型コロナウイルスの感染拡大という予期せぬ事態に直面する中で進んだ。コロナ禍の中での交渉の難しさや、会社としての新型コロナ対策について話を聞いた。

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LIXILグループの瀬戸欣哉社長兼CEO(写真:的野弘路、2019年9月撮影)

懸案だったイタリアの建材子会社ペルマスティリーザの売却が決まりました。

瀬戸氏:コアのビジネスに集中するという私の方針では、ペルマを抱えていることはLIXILの経営的にリスクが非常に大きいし、本業とのシナジーも少ない。事業として常に注視しなければならず、経営リソースを大きく割かれるという問題がありました。そのため、ペルマを売るべきだという考えはずっと持っていました。当然のことながら(解任されていた)8カ月間のブランクがありましたし、その間にビジネスの環境も会社の状況も変わったので、改めて勉強しながらプランを考えました。交渉は相手のある話ですので、売れない場合も想定する必要もあります。売却と自主再建の両方のプランを考えていました。

具体的にペルマの何がリスクだったのでしょうか。

瀬戸氏:リスクとしては、ペルマは1500億円程度の偶発債務を抱えていたことです。資金調達をする場合、平時ならさほど問題になりませんが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大のような危機が起きた際には、重荷になります。

 また、2つの性質の違う事業を抱えるというのは、経営者としてのリソース配分において問題があります。どういうことかというと、トイレやサッシといった事業はプロダクトビジネスです。一方、ペルマが手掛けているのはプロジェクトビジネス(編集部注:高層ビルなどに使われるカーテンウオールという壁材を展開)。プロダクトビジネスは、製造から販売までの期間が短いのですが、プロジェクトビジネスは何年も続きます。プロジェクトの期間中に、新型コロナウイルスの感染拡大のように事業環境が大きく変わってしまうことや、途中で技術上の課題が発生することもあります。

 政治的なリスクもあります。取引先の信用リスクという面で考えても、プロジェクトを始めたときはいい経営状態でも、3年後には悪化している、ということもあります。片方でプロダクトビジネスをやりながら、もう片方でプロジェクトビジネスが抱えるこれらのリスクを全て見るのは、経営者としてのリソースを考えたときに負担が大きいのです。トイレやサッシなどのコアビジネスとのシナジーも少なく、かけているコストとのバランスという問題もあります。

 去年、私がCEOに復帰したときは新型コロナのことを予測するのは当然できなかったわけですが、どこかの時点で景気は悪くなるだろうというのは見えていました。そうなったとき、これらのリスクが顕在化する可能性はあると考えていました。だから、「売る」という方向性に変わりはありませんでした。

自主再建という可能性もあったのですか。

瀬戸氏:売却先が見つからなければ、そうなります。ただ、自主再建したとしてもすぐに黒字になるわけではありません。合理的な売却先があるのであれば、売ろうと決めていました。

2018年10月末にCEOを解任される前、売却方針が決まっていたにもかかわらず、中国企業への売却に懸念を持った米国の対米外国投資委員会(CFIUS)から承認を得られず頓挫した経緯があります。その後、創業家の潮田氏は売却の方針を撤回しました。2019年3月期にはペルマが500億円を超える損失を計上し、LIXILグループは赤字に転落しています。2011年の買収額は約600億円。売却額は非公表ですが、高い買い物だったのではないでしょうか?

瀬戸氏:率直に言えば、失敗だったと言わざるを得ません。

 ペルマについては、私は社長に就任した当初から、売るべきだと考えていました。ただ、取締役会からはなかなか支持を得られませんでした。売ることが決まっても、私は早く売った方がいいと考えていましたが取締役会は条件面で反対することもありました。

 今回の件でいえば、取締役会からは最初から支持を得られ、意見が対立することはありませんでした。私が復帰後に決めたコアの事業に集中し経営体制をシンプルにするという大きな方向性に取締役会は賛成していたので、ペルマの売却方針は最初から承認を得ていました。今回のペルマ売却は、経営体制をシンプルにするという方向性の1つの実行に過ぎません。