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新型コロナウイルスの感染拡大は想定を上回る事態をもたらした。1日でも早く日常に戻れるよう、世界中であらゆる人たちが懸命の努力を続けている。「失敗学」の提唱者として知られ、困難に直面した数々の企業や組織などが立ち直りに向かう過程を見てきた畑村洋太郎・東京大学名誉教授は、今回の事態をどう捉えているのか。

畑村先生は「失敗学」の提唱者として知られ、「危険学」にも力を入れてこられました。今回の新型コロナウイルス問題についての対応には今後の検証が必要かと思いますが、打撃を受けた状態から組織がどう立ち直るか、何を学ぶかについてどうお考えでしょうか。

畑村洋太郎・東京大学名誉教授(以下、畑村氏):「誰が失敗した」「これが間違っている」などと責めるのが正しいのかといったら、そうじゃないですね。マイナス面にばかり目が行ってしまいがちですが、危機から何を学び、次に生かしていくかが大切になると思います。

畑村洋太郎(はたむら・ようたろう)氏
1941年東京生まれ。66年東京大学大学院修士課程修了、日立製作所入社。68年東大工学部助手、69年講師、73年助教授、83年教授、2001年名誉教授。01年4月から18年3月まで工学院大学教授。01年4月に畑村創造工学研究所を開設。東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会委員長など、官民多数の調査委員会や有識者会議の委員を務める。(写真:竹井俊晴、以下の畑村氏写真も。写真は20年2月に撮影のもの)

 それで、ひとつ紹介したい本があるんですよ。『東日本大震災の実体験に基づく 災害初動期指揮心得』というもので、ものすごく参考になります。

まとめたのは「国土交通省 東北地方整備局」。

畑村氏:これはもう何回も読みました。この本を使って何度も議論しているんだけど、過去の災害から得られた教訓を東日本大震災でどう生かしたかが書いてある。

 まず冒頭を見てください。こうあります。

 「備えていたことしか、役には立たなかった。備えていただけでは、十分ではなかった。」