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 コロナ禍のもと、「やむを得ず」在宅勤務、テレワークに移行せざるを得なかった企業は多いだろう。やってみたら意外と「できた」という点もあれば、「できなかった」という点があるのは確か。今後さまざまなインターネットツールを使ったテレワークが広がる可能性はどこまであるのか。政府の雇用制度改革をリードしてきた慶応大学の鶴光太郎教授にアフターコロナの働き方と経済の見通しを聞いた。

鶴光太郎[つる・こうたろう]氏
1960年東京生まれ。84年経済企画庁(現内閣府)入庁。95年OECD経済総局エコノミスト。2000年日本銀行金融研究所研究員。01年経済産業研究所上席研究員。12年から慶応大学大学院教授。内閣府規制改革会議・雇用ワーキング・グループ座長など歴任

新型コロナウイルスが働き方改革に及ぼす影響をどうみますか。

鶴光太郎・慶応大学大学院教授(以下、鶴氏):こういう状況になる前からテレワークの重要性はずっと言ってきた。なぜ重要か。日本はもともと「大部屋型」の職場で、人とのコミュニケーション、情報共有する仕組みが優れているということでやってきた。

 しかし、創造的な仕事や個人が集中できるような環境ではない部分があって、むしろテレワーク、個室的な働き方があるべきだと考えた。もちろん、個人によって集中できる環境は違うので、多様な働き方を選べるというのがいい。日本ではテレワークは介護、子育てなど制限のある働き手のためにあるという見方が強かった。むしろ、ホワイトカラーの集中力、想像力、生産性を高めることが重要だ。

 今起きているのは、小さい子どもを抱える親御さんが、学校が休校となったり、保育園に預けられなくなったままテレワークになっている状況だ。通常のテレワークが想定している状況ではない。通信環境が整っていないケースやリビングで仕事せざるを得ないこともある。インフラが整わないままやっているので、不満が出てくるのは当然だ。

 私自身、今まではメールで伝えるのが難しいことは対面での打ち合わせでも仕方ないと考えていた。しかし、ビデオ会議でやってみると予想以上にコミュニケーションが取れる。学生との面談も機微に触れるような相手の表情が分かる。研究者は資料を示しながらコミュニケーションする方が実は効率がよい。

 1時間も2時間もかけて職場に行く意味がどれだけあるのか。テレワークはやってみたら案外できるのが実感。ただ、そのためのツールを使いこなしていく人と、そうでない人の差が出ている。日本の職場にどっぷりつかってきた人は職場での「あうんの呼吸」に価値を見いだしていたが、そうした心の壁をコロナがぶち壊していく。

中小企業ではなかなか難しいのではないでしょうか。

鶴氏:インフラの問題があった。それでも話を聞くと、工夫によってできるところはある。会社のパソコンを遠隔でコントロールできるようにするなどだ。セキュリティーの整備も以前より低いコストでできるようになっている。中小企業は人が足りないからこそ、ICT(情報通信技術)、デジタル化を活用すべきなのに、むしろそれが進んでいなかった。テレワークを進めることで、人手不足の解消にもつながり、テレワークを活用するためのコストも下がっていく。流れは変わっていくだろう。