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 新型コロナウイルスが世界の医療や経済に深刻な影響を与える中、支援を目的としたお金の流れが生まれている。マスクなど物資による寄付だけでなく、東京都や滋賀県などの自治体は医療用マスクや防護服などを購入するための寄付を募る専用口座を開設。企業や著名人らも相次いで、コロナ支援のための寄付を表明している。

 政府は国民への一律10万円給付を閣議決定し、27日から補正予算案の審議が始まった。収入に変化がない人にとっては、受け取った給付金の一部でも寄付に回すという考えも1つの選択肢になるだろう。

 市民や企業から寄付や投資などの手段で資金が集まるキーワードの1つは「共感」。NPO法人日本ファンドレイジング協会(東京・港)が発行する寄付白書によると、東日本大震災のあった2011年の個人寄付推計総額は1兆182億円で、10年の4874億円から大きく増加した。2011年は「寄付元年」とも言われ、困難な状況に直面した情勢下でお金の流れが変化を見せた。同協会が推計する最新の2016年でも、7756億円まで増加している。

 新型コロナという新たな困難に直面する日本で、「共感」を元にした金銭の流れにどのような変化が生まれつつあるのか。寄付文化の醸成を図る日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆代表理事に見方を聞いた。

認定NPO法人日本ファンドレイジング協会代表理事。主要国首脳会議をきっかけに誕生したGSG社会インパクト投資タスクフォース国内諮問委員会副委員長、寄付月間推進委員会事務局長、非営利組織評価センター理事、JICAイノベーションアドバイザー、大学院大学至善館特任教授なども務める。JICA、外務省、NPOなどを経て2008年NPO向け戦略コンサルティング企業のファンドレックス創業。09年、日本ファンドレイジング協会を創設、12年から現職。課題解決先進国を目指して、社会のお金の流れを変えることを狙う。

今回の新型コロナウイルスに対する寄付の動きについて、現状をどのように把握していますか

鵜尾雅隆代表理事(以下鵜尾氏):寄付をする側から話すと、今回の新型コロナウイルスでも、欧米を中心に3~4月にかけて著名人や富裕層がすでに寄付を表明しています。医療関係が中心でしたが、最近は困難な状況にある家庭やフードバンクなどの弱者に対する支援も出始めているというのが世界の流れです。

 一方、日本ではマスクなどの物資の寄付が始まり、著名人の寄付表明が徐々に出てきたところです。

 今回、日本では「マッチングギフト」という仕組みが出てきた点が特徴的です。海外では広がりつつありましたが、日本にはこれまでほとんどありませんでした。ある団体が寄付を集めると、さらに同じ金額を協力する財団などが拠出するというもので、集める側は倍の金額を得られます。北九州市のNPO法人「抱樸(ほうぼく)」が新型コロナの影響で家を失った人の住まい確保などを目的に1億円の調達を目指したクラウドファンディングは、投資家の村上世彰氏の「村上財団」の3000万円を上限にしたマッチングギフトキャンペーンの対象になっています。

東日本大震災のときには寄付という大きなお金の流れができました。今回も困難に直面している人が多いという点は共通ですが、地域を限定しないことや収束が見えないという違いがあります。今後、どの程度、寄付が盛り上がるでしょうか。

鵜尾氏:東日本大震災の2011年のときには日本人の7割の人がなんらかの寄付をしましたが、今回は現状ではあまり寄付は広がっていません。