新型コロナウイルスの感染拡大で、世界経済が甚大な影響を受けている。米国が経済活動の再開に動き出しているが、感染が再び広がるリスクもある。この先、世界と日本の経済はどうなるのか。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏に聞いた。

コロナショックをどう捉えていますか。

野口悠紀雄氏(以下、野口氏):第2次世界大戦以降、我々が初めて経験する大きな危機です。いつになったら収束するか予測できません。ワクチンと治療薬が開発されるまで(混乱は)続き、それがいつ実現できるか分からない。非常に大きな不確実性の下にあり、影響はリーマンよりもはるかに大きくなるでしょう。

(写真:加藤 康、以下同)
(写真:加藤 康、以下同)

政府は緊急経済対策を発表し、一律10万円の配布なども決めました。

野口氏:政府の対応には哲学がありません。全体の方向性がないのが根本的な問題です。感染防止のために人々の接触を制限するのが最優先の課題。それによって生ずる経済的な損害への対処は、その後に決めることです。今の政府はこの2つをてんびんにかけ、自粛に対する対応も都道府県に任せました。国民は見放されたと言っていいでしょう。

 重要なのは納税の猶予です。これは戻ってくるお金なので、条件なしで認めるべきです。いま大切なのは資金繰り。今回の対策では、収入が2割減ったことを示し、さらに納税が著しく困難だと証明する必要があります。緊急時という認識がなく、従来の「特殊な場合は免除してあげる」という発想から抜け出せていません。

コロナショックは世界に何を問うていますか。

野口氏:コロナ後の世界における考え方では、自由か、管理かが重大な問題になります。もう1つは、世界の虚構が分かった。例えば、EU(欧州連合)はイタリアやスペインを見捨てました。世界保健機構(WHO)も今のままの形では存続し得ないでしょう。また米国の医療保険制度は感染拡大を招きました。多くの制度の根幹を組み直す必要があります。

米トランプ政権は経済の再開に動いています。

野口氏:急ぎ過ぎです。米国で感染拡大が再発すると、世界に第2、第3の波が来ます。国際通貨基金(IMF)の基本見通しでは、2020年の世界の経済成長率は3%のマイナスですが、悪い見通しだと24年までマイナス成長が続きます。

 米ハーバード大のリポートでは、外出規制はあと2年必要となっています。長期化する可能性が高いということです。不確実な場合に重要なのは、最悪の事態に備えること。楽観的な見通しを取ると、取り返しがつかなくなる可能性があります。

コロナ後の経済復興の道筋をどう立てますか。

野口氏:V字回復があり得るという考えは根拠が薄い。抑圧されていた消費が元に戻ることはないし、年2回旅行している人が2回連続で行くこともありません。失業が増え、消費を増やすための基盤が失われている公算は大きい。政府が需要喚起策を出すにしても財政赤字は著しく増大しています。後始末をどうつけるかが重要で、増税の議論は避けて通れません。

 経済の活性化で最も基本的なものはイノベーションです。ただ、コロナの影響がある時期で、イノベーションは著しく阻害されるでしょう。企業が研究開発活動にお金を回す余裕がなありません。長期的な成長から見て、非常に深刻な問題です。

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