新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、人と人との交流が世界各地で制限されている。国はリモートワークを推奨し、「三密」(密集、密閉、密接)となる空間での滞在をできる限り減らすよう呼びかける。人々の生活スタイルは突然、変革を迫られた。国立競技場の設計に携わった建築家の隈研吾氏は、「新型コロナウイルスの流行は、人や資本の一極集中により発展を遂げた20世紀型の社会構造が変化するきっかけになり得る」と説く。コロナ後の世界について聞いた。

<span class="fontBold">隈研吾(くま・けんご)氏</span><br />建築家<br />東京大学特別教授<br />1954年生まれ。79年東京大学大学院修了。90年隈研吾建築都市設計事務所設立。2009年~20年3月、東京大学教授。20年4月より東京大学特別教授(写真:J.C.Carbonne)
隈研吾(くま・けんご)氏
建築家
東京大学特別教授
1954年生まれ。79年東京大学大学院修了。90年隈研吾建築都市設計事務所設立。2009年~20年3月、東京大学教授。20年4月より東京大学特別教授(写真:J.C.Carbonne)

新型コロナウイルスの感染拡大によって、オフィスや学校、商業施設など人が集まる空間の在り方を見直す必要に迫られています。コロナ禍を乗り越えた後の建築計画や都市政策には何が求められるようになるのでしょうか。

隈研吾・東京大学特別教授:コロナ後の世界がどのように変化するかを予測すれば、建物や都市を構築する価値観として、「自由」であることが何よりも重視されるようになるでしょう。「誰もが好きな場所で暮らせる」といった自由がテーマとなり、テクノロジーがそれを可能にするのではないでしょうか。

 20世紀型のオフィスや工場、都市は「集中すること」に価値がありました。例えば、容積緩和によって超高層ビルの建築を可能にする特区を設け、経済の活性化を図るといった考え方もその一つです。工業化社会で成果を上げた仕組みで、「大きな箱」に人が集まって働くことが効率的だと考えられてきました。その方法が現代まで惰性で続いています。

 しかし、今日の技術ならば都市部に通勤しなくてもリモートワークで仕事ができます。今回のコロナ防疫で実際に多くの人が体験し、そのことを理解したはずです。これからは「一極集中主義」と「経済活性化」が一体であるという考え方が成立しなくなります。コロナ禍は20世紀型の構造から脱却するきっかけになるでしょう。働き方や暮らし方などについて、人の意識も変わらざるを得ません。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1452文字 / 全文2257文字

【春割/2カ月無料】お申し込みで

人気コラム、特集記事…すべて読み放題

ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「論点コロナ・エフェクト」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。