防衛相を務めた経験を持ち、安保法制の審議では担当大臣も務めた危機管理の重鎮、中谷元・衆院議員に、緊急事態宣言について聞いた。同氏は、迷うことなく迅速に宣言を発出できるよう「国家緊急事態基本法」を制定すべきだと訴える。あえて「牛刀割鶏」の果断な措置を取るためには、罰則の導入も必要と見る。ただし、国会承認という民主的統制が前提だ。

(聞き手:森 永輔)

サーフィンのため県外から訪れる人に自粛を呼びかける県もある(写真:AP/アフロ)
サーフィンのため県外から訪れる人に自粛を呼びかける県もある(写真:AP/アフロ)

中谷さんは緊急事態基本法の制定を提唱されています。政府が4月7日、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下、新型インフル特措法)に基づいて緊急事態宣言を発出しました。今回の緊急事態宣言では不十分でしょうか。

中谷:はい、新型インフル特措法に基づく緊急事態宣言には大きく2つの問題があり、そのため発出が遅れたと評価しています。1つは、「その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民保護法 第二条国民経済に甚大な影響を及ぼ」すことを発出の要件としていること。感染が「全国的」であるかを確認するのに時間を要しました。本来は全国にまん延する前に手を打たなければならないはずです。

<span class="fontBold">中谷 元(なかたに・げん)</span><br> 1957年生まれ。1980年、防衛大学校卒業。自衛隊に入隊し、レンジャー教育教官などを務めた。衆院議員秘書を経て、1990年に初当選。防衛相や安全保障法制担当相を歴任。(写真:菊池くらげ)
中谷 元(なかたに・げん)
1957年生まれ。1980年、防衛大学校卒業。自衛隊に入隊し、レンジャー教育教官などを務めた。衆院議員秘書を経て、1990年に初当選。防衛相や安全保障法制担当相を歴任。(写真:菊池くらげ)

 危機管理は「牛刀割鶏」を善しとしなければなりません。

大げさな対応をいさめる言葉ですね。鶏をさばくのに牛用の包丁は必要ない、と。

中谷:ええ、危機管理ではその大げさを「善し」として、最初の段階で大胆な手段を用いる必要があります。遅れれば、取り返しのつかない事態を招きかねないからです。世間から怒られるくらいでよい。

 もう1つの問題点は、外出の規制などが要請・指示にとどまることです。これでは拘束力に限界があります。感染の拡大を早期に押しとどめるためには、罰則付きの禁止や命令をためらってはならないときがあります。

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