防衛相を務めた経験を持ち、安保法制の審議では担当大臣も務めた危機管理の重鎮、中谷元・衆院議員に緊急事態宣言について聞いた。同氏は、国家としての生存権を憲法に定めるべきだと説く。「国家が崩壊すれば人権も守れない」。緊急事態宣言をそのための手段と位置付ける。

(聞き手:森 永輔)

(前編はこちら

今回の緊急事態宣言では、外出自粛や休業の要請と、その経済補償の関係もクローズアップされました。

中谷:その点も緊急事態基本法にきちんと定めるべきです。

<span class="fontBold">中谷 元(なかたに・げん)</span><br> 1957年生まれ。1980年、防衛大学校卒業。自衛隊に入隊し、レンジャー教育教官などを務めた。衆院議員秘書を経て、1990年に初当選。防衛相や安全保障法制担当相を歴任。(写真:菊池くらげ)
中谷 元(なかたに・げん)
1957年生まれ。1980年、防衛大学校卒業。自衛隊に入隊し、レンジャー教育教官などを務めた。衆院議員秘書を経て、1990年に初当選。防衛相や安全保障法制担当相を歴任。(写真:菊池くらげ)

 罰則を伴う禁止や命令を出す以上、それによって生じる負担は国が補償すべきです。「営業をやめてください」「自粛してください」「通勤をやめてください」と求めるのであれば、補償という「太陽」をセットにする。

 例えば国民保護法*はいわゆる戦争において、避難民の収容施設や医療施設のための土地を、所有者の同意を得ることなく使用することができるとする一方、それによって生じる「損失を補償しなければならない」と定めています。建物や物資についても同様です。

*:正式名称は「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」

(土地等の使用)
第八十二条 都道府県知事は、避難住民等に収容施設を供与し、又は避難住民等に対する医療の提供を行うことを目的とした臨時の施設を開設するため、土地、家屋又は物資(以下この条及び第八十四条第一項において「土地等」という。)を使用する必要があると認めるときは、当該土地等の所有者及び占有者の同意を得て、当該土地等を使用することができる
2 前項の場合において土地等の所有者若しくは占有者が正当な理由がないのに同意をしないとき、又は土地等の所有者若しくは占有者の所在が不明であるため同項の同意を求めることができないときは、都道府県知事は、避難住民等に収容施設を供与し、又は避難住民等に対する医療の提供を行うことを目的とした臨時の施設を開設するため特に必要があると認めるときに限り、同項の規定にかかわらず、同意を得ないで、当該土地等を使用することができる

(損失補償等)
第百五十九条 国及び地方公共団体は、第八十一条第二項、第三項若しくは第四項(同条第一項に係る部分を除く。)、第八十二条、第百十三条第一項若しくは第三項(同条第一項に係る部分に限る。)、同条第五項(同条第一項に係る部分に限る。)において準用する災害対策基本法第六十四条第七項若しくは第八項、第百二十五条第四項又は第百五十五条第二項において準用する同法第七十六条の三第二項後段(同条第三項又は第四項において準用する場合を含む。)の規定による処分が行われたときは、それぞれ、当該処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない

 今回の緊急事態宣言の根拠法となった新型インフル特措法は、補償について定めていません。これでは、人々は従う気にはならないでしょう。宣言が期待する効果を早く出すためにも、補償措置は欠かせないと考えます。

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