商店街からは「テナント料が払えない」という悲鳴が上がりました。パートさんも雇っておけないから、そのご家庭の子どもさんも食べていけなくなるなど影響も広がっていきます。
そうしたときに明石市ではスピード感のある対策が必要だということで、20年4月に2カ月分のテナント料として最大100万円を無利子で貸し付けることを始めました。4月25日から続々と振り込んでいき、何とかこれでしのいでくださいとお願いしたのです。
加えてひとり親家庭に対しては児童扶養手当について5万円の上乗せ支給をしました。家計やアルバイト収入への影響から学費が払えないとの大学生の声に応えて、20年度前期の学費分として100万円の無利子貸与も5月に開始しました。必要と考えていたのは、目の前で沈みそうな市民、商店街をすぐに助け切るということです。
手厚い支援を行ってきたということですが、財政面への影響はなかったのでしょうか。
泉氏:私は基金を取り崩してでも今はやるべきだと考えていましたし、今も思っています。結果として国から一定程度の支援をいただきましたので、独自の支援策は相当やってきましたが、それほどお金は減っていません。明石市はコロナ前に無駄遣いをなくし財政健全化をしていた経緯もあったので、思い切った政策をしても財政状況には大きな影響は出ていません。
国のコロナ対策についてはどう見られてきましたか。
国もこの1年あまり結構な金額を費やしてきましたが、スピード感がなく、時機を失していることも多かった。国がやっているのは、彼らが海に沈んだあとにゆっくり(支援を)出そうとするようにも見えます。ほとんどニーズに合っていません。同じような額のお金を使っても、必要なときに間に合わせないといけないし、足りないのであれば対象を絞ってでもピンポイントで救わなければならないところを救わないと。それによって経済が持ち直していくわけです。国は満遍なくやろうとしているので、効果が薄く、使った金額に見合う効果が得られたのかは甚だ疑問です。
当初の海外との関係についてもそうです。感染対策としては、とにかく日本への入り口を閉めることが必要だった。でも初期対応を誤ってしまった部分は正直あると思います。
政治というのは結果責任を負うもの。私は国の対策は失敗が続いたと考えます。
国の経済対策としてはGo Toキャンペーンもあります。どのように考えていますか。
泉氏:私は大変批判的に見ています。一時の経済を持ち直すために余計に感染者を増やしているのでは意味がありません。そういう意味では明らかな失策だと思います。国民へのメッセージとして、今が辛抱の時期なのか、街や地方に出て行く時期なのか、二転三転してしまったことも問題でした。
現在はGo Toトラベル事業は停止しています。再開時期についてはどうお考えですか。
泉氏:再開しないほうがいいです。愚かな政策はする必要がありません。税金の使い方が間違っています。今は本当に困っている人を支援する時期だと思っていますが、Go Toトラベルは高級ホテルに泊まっていた人を超高級ホテルに泊めるだけのようなもの。お金持ちにお金を配る時期ではないと思います。
4月からは高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種が始まります。自治体の中には接種する医療従事者や会場の確保に苦慮する声もありました。
泉氏:明石市はすでに医師会と連携して個別接種ができる態勢や場所は確保していますし、特に不安に思っていることはありません。国からの情報が錯綜(さくそう)していて、当初のスケジュールから随分押してきているので、正確な情報をいただきたいとは思っています。
今後の収束への道筋についてはどう考えていますか。
泉氏:ワクチンにはもちろん効果はあるとは思っていますが、とはいえ全てが解決するほど単純なことではないでしょう。コロナとはしばらく付き合っていかなければならないと思っていますし、すでに大きく変わった生活様式も戻らないものも多いと考えています。
例えば、大人数の忘年会などはなかなか戻らないかもしれない。そうなると飲食関係の業種は業態の変更が引き続き必要だと思います。また、教育現場のオンライン化が進んでいますが、コロナ対策と同時に不登校の子供たちが家にいながら学び続けられるといったように、コロナ対策がある意味でプラスに働いた面もあるでしょう。高齢者向けの生涯学習の場もオンラインで設けましたが、そういった対応は今後もメリットになる部分はあると思います。
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