ANAホールディングス(HD)がマイルやクレジットカードなど、非航空事業の強化を打ち出している。12月10日にスマホ決済サービス「ANA Pay」を始めたのに続き、16日には「ANAマイレージクラブ」の上級会員となるための条件にANAカードやANA Payの決済額も加えるキャンペーンを始めた。約3700万人のマイル会員を基盤に、ANA版の「スーパーアプリ」を構築しながら非航空事業を伸ばす考えだが、同分野はIT(情報技術)大手を中心に競合がひしめく。勝算はあるのか。

ANA Payはマイレージクラブ会員向けのスマホアプリで使える決済サービス。ジェーシービー(JCB)の決済基盤を利用しており、JCBのクレジットカードからANA Payにチャージして利用する。決済額200円につき1マイルがたまる。利用できるのは主にJCBの統一QRコード規格「スマートコード」を導入している店舗。コンビニではローソン、外食ではケンタッキーフライドチキン、家電量販店ではヤマダ電機などが代表的だ。
「キーワードは『スーパーアプリ』」。ANAHDの片野坂真哉社長がこう掲げ、今後強化していく方針を示したのはプラットフォームビジネスだ。新型コロナウイルスの感染拡大で露呈したのは「航空一本足」の事業構造の脆弱さ。航空需要の急激な落ち込みで2021年3月期は5050億円の営業赤字となる見通しだ。
カード・マイレージ事業の売上高を5年で約2倍に
そこで年間決済額が4兆円規模のANAカード事業、そして3700万人のマイレージ会員といった顧客資産を活用する。航空や旅行サービスだけでなく、MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)や様々な生活サービスも提供するプラットフォームビジネスを展開して「幅広い接点でお客様と関係性を構築・維持できる『グループ回遊型』への進化を目指す」(マイレージ事業などを手掛けるANA X 事業推進部の平林正義マネジャー)。現状は2千数百億円のカード事業とマイレージ事業の売上高を5年で約2倍に拡大できるとみている。
ANA Payが持つ役割は2つある。まず、ANAが提供するクレジットカード「ANAカード」の決済額を押し上げることだ。ANA Payでは、ANA JCBカードでチャージしたときにもマイルを付与する仕組みとした。カードの種別によって異なるが、1000円ごとに1~11マイルがたまる。ANA JCBカードでのチャージを促してカード事業の売上高を伸ばす考えだ。
2点目は、利用頻度が高いサービスをまとめて提供する「スーパーアプリ」の実現に向けた日常的な顧客接点としての役割だ。もともと、ANAの公式ウェブサイトには1日当たり1億4000万件のアクセスがある。公式アプリのダウンロード数も数百万規模とみられる。それだけ、航空・旅行はネット上でも「引きの強い」事業といえる。
ただ、スーパーアプリには日常的にそのアプリを開くきっかけが欠かせない。
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