特集連載「ANA・JAL 苦闘の600日」の第8回。コロナ禍が翼を奪った航空業界だったが、その「飛べない世界」でもマイレージ・クレジットカード事業の顧客は離れなかった。航空一本足の事業構造が抱える脆弱性を痛感した両社とも強化を急ぐ。米国系には利益の3割を稼ぐところも。成長余地はまだある。

タクシーアプリ「GO」でもマイルをためられるように。経済圏の拡大を急ぐ
タクシーアプリ「GO」でもマイルをためられるように。経済圏の拡大を急ぐ
使い勝手の良さで先に行く共通ポイント「Tポイント」。ライバルは多い(写真=時事)
使い勝手の良さで先に行く共通ポイント「Tポイント」。ライバルは多い(写真=時事)

 「毎年、ためたマイルで海外旅行に行くのが楽しみで」。こう話す東京・豊洲に住む30歳の男性は日本航空(JAL)の「マイラー」だ。出張の際は原則JALを利用。クレジットカード「JALカード」を生活費の決済に使い「結婚式代もカードで支払った」(男性)。毎年10万マイルほどをため、旅行という共通の趣味がきっかけで交際を始めた1歳下の妻と時にはビジネスクラスを使い、世界中を旅する。

 ANAホールディングス(HD)が約3700万人、JALは約3000万人の会員を抱えるマイレージ(マイル)事業は不思議な「引力」を持つ。日常的なサービスを通じてマイルをためる人を指す「陸マイラー」という言葉があるほど、航空マイルには一定数のファンがいる。

 その魅力は何といっても、「特典航空券」に交換でき、お得に旅に出かけられること。JALによると、航空券購入時のマイルの「還元率」は平均5%ほど。5万円の航空券を買えば2500マイルほどがたまる計算になる。その上で、マイルの価値は航空券に交換すると一番高くなる。国内線航空券でおよそ1マイル1.5円、国際線であれば1マイル2~8円ほどに跳ね上がる。「通常のポイントサービスだと1ポイント1円という扱いがほとんど。お得な使い道をあれこれ考えられるところもマイルの魅力ではないか」(航空大手のマイル事業の元責任者)。この魅力を生かし、ANAHDとJALは収益につなげている。

 一つはマイルを外部に販売するビジネスだ。コンビニやタクシー、ホテルなど生活のあらゆる場面でマイルはためられる。各事業者が誘客のため、ANAHDやJALからマイルを仕入れ、消費者に還元しているわけだ。マイルの売値は「Tポイント」など共通ポイントに比べ高いとされる。使い道は自社商品の特典航空券が多く、利幅が大きい。

 もう一つはクレジットカード事業だ。航空券を購入する際、利用航空会社のクレジットカードで決済するとマイルを多くためられる。航空利用の頻度が高い人は航空系のカードを作り、よりマイルをためるためにあらゆる支払いを集約する。その決済手数料などを得られる。

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