「輸血」と「止血」

 リスクの逆襲。ANAHDが置かれていた状況を一言で表すとそれだ。

 2010年、日本航空(JAL)が経営破綻すると、ANAHDは一気にナショナルフラッグキャリアの座をつかもうと動いた。JALは破綻後、国土交通省によるいわゆる「8.10ペーパー」で投資や路線の開設を抑制された。これを好機としてANAは米ボーイングの中型機「787」を中心に機材数を増やし、主に国際線の路線網拡大に走る。13年には7年後の東京五輪・パラリンピックの開催が決まり、日本はアベノミクス景気に沸き始めた。

 インバウンド客の増加も背景に事業規模は急拡大。19年3月期には売上高が初めて2兆円を超えた。7年前の1.5倍弱だ。次に見据えるのは20年3月に控える、ビジネス需要が大きく収益力の高い羽田空港の国際線発着枠の拡大。五輪効果も最高潮となるこの年に、さらなる飛躍を図ろうとする矢先のコロナ禍だった。

 成長のためにリスクを取って拡大したバランスシートがANAHDを苦しめた。20年3月までの8年間で機材は77機、従業員数は4割増(格安航空会社=LCC=の連結化効果を含む)。その分、現預金は圧迫され、流出の速度は速くなっている。20年3月末にあった2386億円の手元流動性は一気に底を突く可能性があった。

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この記事はシリーズ「高尾泰朗の「激変 運輸の未来図」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。