新型コロナウイルス禍で苦しんだANAホールディングス(HD)と日本航空(JAL)の業績が回復している。両社の2022年4~9月期決算は中間決算として3年ぶりに本業のもうけを示す利益ベースで黒字転換。旅客需要の回復やコストの圧縮が寄与している。通期での黒字化も確実視され始めているが、気になるのはコロナ禍で稼ぎ頭だった事業に忍び寄る暗雲だ。
日経ビジネスは9月、書籍『ANA 苦闘の1000日』を発行しました。ANAHDがどのようにコロナ禍という困難に立ち向かい、それを乗り越えようとしているのかを経営陣や現場の社員への丹念な取材を通じて描いており、競合であるJALとの関係性についても紹介しています。
書籍発行に連動し、日経ビジネスLIVEでは11月10日(木)18:00~19:00にウェビナー「コロナ禍に揺れたANA、トップが語る1000日」を開催します。登壇するのはANAHDの片野坂真哉会長です。コロナ禍の2年半余りを振り返りつつ、「アフターコロナ」の航空業界、そしてANAHDのあるべき姿やそのグランドデザインについて語ります。参加を希望される方は「11/10開催 「ANA 苦闘の1000日」を片野坂会長が振り返る」から詳細をご確認ください。

「人々が移動すれば確実に利益が出る構造になっている」。10月31日、ANAHDの芝田浩二社長はこう胸を張った。同日発表した22年4~9月期決算は営業利益が314億円となり、中間決算としては3年ぶりの黒字となった。
ANAHDは上方修正も
航空業界にとって最大の繁忙期である7~9月期。新型コロナの「第7波」でそのペースは若干鈍ったものの、旅客需要の回復ぶりは鮮明だ。ANAHDの同期の国際線旅客数は21年に比べ約5倍、国内線は2.2倍弱に増えている。結果、売上高は9割増となった一方、コロナ禍で鍛え上げたコスト構造が光り、営業費用は4割強の増加に抑えた。この傾向はJALも同様だ。22年7~9月期はEBIT(利払い・税引き前利益)が279億円の黒字となっている。
ANAHDは23年3月期の営業利益の予想を従来の500億円から650億円に上方修正した。短期的にはコロナ禍の動向によって業績が下振れする恐れがあるものの、国の観光需要喚起策「全国旅行支援」の継続実施や、実質的に新型コロナワクチンの3回接種を日本入国へのハードルとして課す水際対策の緩和などが実現すれば、業績はさらに上振れする可能性もある。
JALは22年10月~23年3月期にEBITが約800億円の黒字となる強気の予想を示す。「我々は『JALフィロソフィ(哲学)』に基づいて常に高い目標を持つことを社内で共有している。わざと保守的な目標にして、それが上振れしたからよしとするような企業文化ではない」(代表取締役専務執行役員の菊山英樹氏)
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