特集連載「ANA・JAL 苦闘の600日」の第6回。第5回では大手2社が新型コロナウイルス禍とどう対峙してきたか、ルポルタージュで振り返った。今回と次回で、両陣営の経営のキーパーソンにこれまでの歩みと再成長に向けた戦略を聞く。

 期初時点での黒字予想から一転、2022年3月期が2期連続の最終赤字となる見込みだと10月末に発表したANAホールディングス(HD)。積極的に路線網を開拓してきたこの10年だったが、突然の危機で痛手を負った格好だ。ただ、芝田浩二代表取締役専務執行役員は攻めて利益を生んできたからこそ、コロナ禍という大波を乗り越えられつつあると話す。売り上げを増やし、コストを抑える。基本に立ち返ってアフターコロナを見据えている。

<span class="fontBold">芝田浩二(しばた・こうじ)</span><br />鹿児島県出身。1982年、東京外国語大学外国語学部卒業後、全日本空輸(現・ANAホールディングス)入社。2005年、アライアンス室長に就任。提携先の海外勢との調整を取り仕切る。12年執行役員、20年取締役常務執行役員。21年から現職。グループ経営戦略を担当する。(写真:的野弘路)
芝田浩二(しばた・こうじ)
鹿児島県出身。1982年、東京外国語大学外国語学部卒業後、全日本空輸(現・ANAホールディングス)入社。2005年、アライアンス室長に就任。提携先の海外勢との調整を取り仕切る。12年執行役員、20年取締役常務執行役員。21年から現職。グループ経営戦略を担当する。(写真:的野弘路)

新型コロナウイルス禍に振り回された1年半でした。

ANAHD芝田浩二代表取締役専務執行役員(以下、芝田氏):20年2~3月、羽田空港と成田空港に行って現場のスタッフに状況を聞きました。その頃はまだコロナ禍の予兆を感じられた程度。ここまで長引くものだとは正直、思っていませんでした。ただ、春になると一気に需要が減り、空港は閑散としてしまった。様々な危機を経験してきましたが、あんな光景は見たことがなかったです。ずっと駆け足で対応に追われ、あっという間に今を迎えました。できる限りの施策はやってきましたが、出口、明かりが見えない中での辛抱はきつい。その中でも従業員にはよく我慢してもらって、協力を得てこられたという思いが強いです。 

新型コロナウイルス禍を経て、相当な規模のコスト削減を実施してきました。特に人件費については、従業員に賞与や賃金のカットなど待遇面で大きな負担を強いています。

芝田氏:もしリーマン・ショック級の危機が来たら、うちの経営はどうなるのか。コロナ禍前から常に役員の間でシミュレーションし、取るべき対策を考えていました。ただ、ここまで対策を深掘りすることになるとは思っていなかった。用意していたメニューの最後の選択肢として、従業員の協力があったということです。

21年3月期は4647億円の営業赤字となりました。その赤字幅の背景に、超大型機「A380」の導入に象徴されるような、国際線を中心とした拡大路線の反動を指摘する声もあります。

芝田氏:過去、進めてきた戦略は正しかったという確信があります。08年のリーマン・ショック以降、コスト改革、構造改革に取り組んできました。だからこそ、11年3月期以降、連続して黒字を出してこられた。その結果、利益が蓄積され、その蓄えで今回の大波にもこらえられました。

 企業の成長は拡大路線なくしてはなかなか難しい。日本の人口減少の問題もあり、国内線は少なくとも大きな成長の下支えにはならない。そこで国際線に照準を合わせて成長を加速させてきました。

 国際線の場合、世界的なネットワークをどう構えるかが航空会社の強みになります。もちろん、世界中をANA1社でカバーできるネットワークと競争力を持てればいいのですが、それはかないません。そこで(加盟する航空連合の)「スターアライアンス」も活用します。自力での展開と航空連合を通した海外勢との連携。この両方を兼ね備えながら秩序ある成長を遂げてきたと感じています。

確かに「A380」のイメージが強い国際線の拡大路線ですが、米ボーイング製の中型機「787」を中心に堅実に進めてきた印象もあります。

芝田氏:市場特性を鑑み、しっかりとマーケティングをした上で新規路線を就航してきました。決してむちゃをしたという認識はない。A380に関してもそうです。適材適所の観点から言えば、この機材は米ハワイ路線に最適です。需要が戻り、フル稼働すれば利益貢献してくれる機材です。

路線網を構築していく上で、日本航空(JAL)のように海外勢とのコードシェア(共同運航)や共同事業を重視する選択肢もあったはずです。

芝田氏:もちろん、その観点も取り入れてきました。だからこそ、フィリピン航空(の親会社)やベトナム航空に出資してきたわけです。両社ともコロナ禍で業績を落としていますが、互いにこの波を乗り切れれば、この連携は再びアジア市場に利便性をもたらすでしょう。結果的にANAとしての競争力も高まり、収益性の向上につながると期待しています。

コロナ禍以降、随時発表してきた需要の先行きに関する予測ですが、実績が下振れし続けてきました。

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