特集連載「ANA・JAL 苦闘の600日」の第4回。第2回では大手2社のLCC(格安航空会社)戦略を概観した。前回に続き、LCCのトップに戦略を聞く。

 ANAホールディングス(HD)傘下のLCC、ピーチ・アビエーション(大阪府田尻町)は10月31日から、全日本空輸(ANA)が運航していた一部の便を代わりに運航する取り組みを始めた。8月からはANAとの共同運航(コードシェア)も開始している。かつてピーチはANAとのコードシェアに否定的で、匂いが強いため機内食としては避けられるたこ焼きを機上で販売するなど従来の航空会社にない発想を携え、独自路線で成長を続けてきた。ピーチへのANAの「締め付け」に対しては、ANAHD内部からも慎重論が出ている。ピーチは今後、どのように再成長を果たそうと考えているのか。森健明CEO(最高経営責任者)に聞いた。

<span class="fontBold">森健明(もり・たけあき)</span><br />1962年長野県生まれ。東京外国語大学卒業後、全日本空輸に入社し、航空機のオペレーション全般に関わる業務を担当。2011年にA&Fアビエーション(現ピーチ・アビエーション)に入社し、17年に副社長。20年4月から現職。
森健明(もり・たけあき)
1962年長野県生まれ。東京外国語大学卒業後、全日本空輸に入社し、航空機のオペレーション全般に関わる業務を担当。2011年にA&Fアビエーション(現ピーチ・アビエーション)に入社し、17年に副社長。20年4月から現職。

2021年のお盆期間の国内線旅客数は前年同期に比べ9割近く増え、座席利用率も7割を超えました。全日本空輸(ANA)などフルサービスキャリア(FSC)に比べ、需要の回復が早いように思えます。

ピーチ・アビエーション森健明CEO(以下、森氏):新型コロナウイルス禍前の19年はバニラ・エアとの統合作業中で機材の移管も終わっていませんでした。作業が終わって20年、いよいよというときにコロナ禍がやってきました。国際線が運航できない分、国内線に機材など経営資源を回した結果、国内線の座席供給量が大幅に増えました。そんな中で21年のお盆を迎えたわけです。

 LCC事業は、搭乗日の3~4カ月前から本格的に航空券の販売を始め、いかに先行して需要を取り込めるかが鍵です。運賃は空席連動型なので、利用者にとっても早く予約した方が安くなります。そして1カ月ほど前になると先行需要は取り切っていますので、残りの座席を一気に売り切る。運賃は上がっていますが、この時期に買う人は具体的な旅行の日程を決めているので、多少高くても買ってくれる。結果的に9割ほどの利用率を稼ぐというのが基本的なビジネスモデルです。

 お盆の予約は感染状況が一時的に落ち着いた6~7月にキャンペーンを打って、一気に先行需要を取り込みました。ただ、デルタ型の感染拡大が起きて、最後の積み上げができなかった。その結果が利用率7割という数字で、もし感染状況が落ち着いたままであれば、8~9割には達していたと思います。

とはいえ、この利用率は今後への希望が持てる数字ではないでしょうか。

森氏:そうですね。コロナ禍以降では最高の数字です。ピーチの客層はコロナ禍を経ても変わっていません。レジャーやVFR(友人への訪問や帰省)目的が中心で、価格には敏感です。こうした層は潜在的に多いというのが改めてわかりました。

コロナ禍後、FSCもレジャー需要を取り込もうと動き、相当運賃を下げています。競争力は不変ですか。

森氏:羽田空港発着便で相当値段を下げているのは知っています。旅行会社経由の航空券も安いですよね。ただ、それでもLCCの方が安い。うちは少しでも安い航空会社を選ぼうとする個人客が中心です。とりわけ、搭乗日が近づいても安いのはLCCだけ。そうした点で我々を選んでくれる利用客がいるということです。

 当然、FSCにもレジャー・VFR需要の客はいますが、やはりボリュームが違います。そしてレジャー層にも価格を気にしない層と家族などで少しでも安く旅行したい層がいます。伸びしろはどこかと考えたときに、やはり我々が強い低価格帯のレジャー需要が伸びると考えているわけです。

客層が完全に分かれているというよりは、1人の客がFSCとLCCを利用シーンで使い分けるイメージなのでしょうか。

森氏:ビジネス需要が低迷する中でも、ANAの上級クラスは利用率が高い。レジャーで使われているのでしょう。そこ(の需要を取り込めるサービス)は我々にはない。少しリッチな旅はFSC、気軽な旅はLCCという使い分けです。

利用シーンが異なるにもかかわらず、8月からはANAとのコードシェアを一部路線で始めました。過去、その可能性に否定的だったわけですが、なぜ「心変わり」したのでしょうか。

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