ANAホールディングス(HD)でマイレージ(マイル)事業などを手掛けるANA X(東京・中央)は10月20日、「ANAマイレージクラブ(AMC)」会員向けのスマートフォン(スマホ)アプリを大幅リニューアルすると発表した。航空券の購入などに限らず、EC(電子商取引)や決済機能などANAグループの様々なサービスへの「ゲートアプリ」として機能させるという。ANAHDはコロナ禍でそのもろさを痛感した「航空一本足」の事業構造から脱却しようと、マイルなどの非航空事業の売上高を今後数年でコロナ禍前の2倍となる4000億円程度まで拡大する計画を示している。その中核になるのがANA Xであり、今回の「ゲートアプリ」だ。ただ、構想実現に向け先立って始めたサービスは必ずしも消費者の支持を得られているとはいえない。成功には外部企業との連携など大胆な発想も必要になってくる。

 日経ビジネスは9月、書籍『ANA 苦闘の1000日』を発行しました。ANAHDがどのように新型コロナウイルス禍という困難に立ち向かい、それを乗り越えようとしているのかを経営陣や現場の社員への丹念な取材を通じて描いており、非航空事業を拡大すべく奮闘するANA Xの姿も登場します。

 書籍発行に連動し、日経ビジネスLIVEでは11月10日(木)18:00~19:00にウェビナー「コロナ禍に揺れたANA、トップが語る1000日」を開催します。登壇するのはANAHDの片野坂真哉会長です。新型コロナウイルス禍の2年半余りを振り返りつつ、「アフターコロナ」の航空業界、そしてANAHDのあるべき姿やそのグランドデザインについて語ります。参加を希望される方は「11/10開催 「ANA 苦闘の1000日」を片野坂会長が振り返る」から詳細をご確認ください。

ANAホールディングスが非航空事業への注力を鮮明に打ち出したのは、利用者の急減を招いたコロナ禍がきっかけだ(写真=ロイター/アフロ)
ANAホールディングスが非航空事業への注力を鮮明に打ち出したのは、利用者の急減を招いたコロナ禍がきっかけだ(写真=ロイター/アフロ)

 「新たなサービスを付け加えて、多くのお客様に様々な用途で使って頂けるアプリを育てていきたい」。20日、こう話したのはANA Xの轟木一博社長だ。AMC会員向けのアプリ(AMCアプリ)は従来、マイル残高の確認や会員向けの物理カードに代替するデジタルカード機能などを搭載してきたが、今回の大幅リニューアルで「ミニアプリ」として様々なANAグループのサービスを備え、利用の「入り口」として機能するアプリと変貌する。グループでは航空券の予約・購入ができるほか、搭乗券としての機能なども果たす「ANAアプリ」も運用しており、このアプリの方が利用者数も多いが、ANAアプリもAMCアプリと連携するミニアプリの一つ、という位置づけとなる。

必然性なき「スーパーアプリ」の必要性

 「キーワードは『スーパーアプリ』」。コロナ禍で構造改革に迫られた20年秋、ANAHDの片野坂真哉社長(現・会長)は非航空事業の成長に関する説明の中でこうぶち上げた。スーパーアプリとは、チャットや配車、決済など日常生活で使うサービスを一括で提供するアプリのこと。決済機能を軸に金融全般にカバー範囲を広げる中国の「アリペイ」や、配車アプリから機能を拡大していったインドネシアの「ゴジェック」などが有名だ。轟木氏はAMCアプリを「ゆくゆくはスーパーアプリと評価されるようなアプリに育てたい」と話す。

ANA Xの轟木一博社長
ANA Xの轟木一博社長

 ただ、国内でも「ヤフー」のZホールディングスとLINEが21年に控えていた経営統合の目的の一つとしてスーパーアプリの実現を掲げるなど、IT(情報技術)企業を中心に競争相手が多い領域だ。そんな中、なぜANAHDはスーパーアプリを構想しているのだろうか。実際のところ、ANAHDがスーパーアプリを手掛けることに「必然性」はない。技術面でも人材面でも、IT企業と同じ土俵で戦えば勝ち目はない。ただ、ANAHDが非航空事業の拡大に向けて掲げる戦略の中では、スーパーアプリの「必要性」が確かにある。非航空事業の拡大、そしてスーパーアプリ構想をけん引するANA Xの轟木社長の異色の経歴や考えをひもとくと、その一端が見える。

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