第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の開幕を月末に控える中、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)がそろって目標に掲げる2050年の二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロの実現に向け、動きを見せ始めた。8日には両社が共同でSAF(持続可能な航空燃料)の重要性を訴えるリポートを発表。異例とも言えるタッグは欧米に比べ、脱炭素に向けた取り組みが遅れているとの危機感からだが、2社の足並みはいまひとつそろわない。協調か競争か――。これは環境対応だけでなく、アフターコロナの航空業界に通底するテーマだ。


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JALとANAは共同でSAFの重要性を訴えるリポートを発表(写真左はANAの平子裕志社長、右はJALの赤坂祐二社長)
JALとANAは共同でSAFの重要性を訴えるリポートを発表(写真左はANAの平子裕志社長、右はJALの赤坂祐二社長)

 「CO2(二酸化炭素)削減に貢献するSAFの安定供給と国際競争力のある価格の実現は、航空機から排出するCO2実質ゼロに向けた有効なソリューション」。8日、JALとANAは共同でまとめたリポートでこう訴えた。SAFとは廃油や植物などを原料とした再生燃料を指す。

 世界のCO2排出量の2~3%を占める航空産業。十数%を占める自動車産業は、電動化や水素エンジン化を急ぐが、航空会社が使う中大型の飛行機は電動・水素エンジン化が現状では難しい。JALとANAは省燃費機材の導入などでもCO2排出量の削減を図るが、50年の「実質ゼロ」実現には実質的にCO2排出量の8~9割を減らせるとされるSAFの活用が不可欠と見ている。2社は共同リポートの中で、日本が調達する必要のあるSAFは50年には年間最大約2300万キロリットルに上ると試算した。19年に日本で消費された航空燃料の2倍にあたる。

 ただ、世界的にSAFの量産化体制は整っていない。業界団体の航空輸送アクショングループ(ATAG)によると、20年の航空燃料の需要量に対するSAF流通量は0.03%。30年時点でも最大で6.5%までしか増えない見通しだ。製造コストも現状は従来の燃料費を大きく上回る。そんな中でも欧米では量産化に向けた道筋がつきつつあるが、日本で国産SAFが商業ベースに乗るのは30年ごろの見通しだ。日本は航空業界の脱炭素に向けた取り組みが欧米に比べ遅れていると言わざるを得ない。

需要家も争奪戦の相手に

 「SAF争奪戦」は航空業界以外にも広がる。「まさかアマゾンも競争相手になるとは……」。航空大手の調達部門の担当者はこう嘆いた。

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