日本航空(JAL)の赤坂祐二社長は日経ビジネスの取材に対し、格安航空会社(LCC)事業の拡大をテコに業績回復を図る方針を示した(JAL赤坂社長「統合はない、LCCで再成長」)。この方針は競合のANAホールディングスも同様だ。新型コロナウイルスの感染拡大によってテレワークやオンライン会議が浸透したことで、出張などビジネス目的の航空需要はコロナ禍以前の水準には戻らないというのが業界の定説。レジャー需要を取り込むべく、LCCを強化するのは合理的にも思えるが、「共存共栄」に向けた難題は山積している。

JALは完全子会社のジップエア・トーキョー、連結子会社化した春秋航空日本、50%を出資するジェットスター・ジャパンの3社で、成田空港を拠点としたLCC路線網を構築する方針だ
JALは完全子会社のジップエア・トーキョー、連結子会社化した春秋航空日本、50%を出資するジェットスター・ジャパンの3社で、成田空港を拠点としたLCC路線網を構築する方針だ

 「(コロナ禍を経て)ビジネス需要が減るのは間違いない。ただ今後、観光需要は急激に戻ってくる。そこを取り込むべく、LCCを強化していく」。こう話すのは日本航空(JAL)の赤坂祐二社長だ。6月末には、少額出資していた中国系のLCC、春秋航空日本(千葉県成田市)への追加出資と連結子会社化が完了した。

 JALが50%を出資する、豪カンタスグループとの合弁会社、ジェットスター・ジャパン(同)にも追加出資し、関係を強化する。20年に事業を本格開始した、国際線の中長距離路線を主に担う完全子会社のジップエア・トーキョー(同)を加えた3社で「成田空港を中心としたグローバルなLCCネットワークをつくる」と赤坂社長は力を込める。

 ジップエアやジェットスター・ジャパンは貨物輸送も担う。この増収も含め、LCC3社で2024年3月期にEBIT(利払い・税引き前利益)で120億円、売上高に占めるEBITの割合が10%を超える水準を目指すという。

 ANAホールディングス(HD)もLCCを再成長に向けた柱に据える。傘下のピーチ・アビエーションはコロナ禍以降、国内線網を強化し、旅客数ではLCCの中でトップだったジェットスター・ジャパンを逆転した。さらにANAHDは22年度後半にも、100%出資会社でグループのアジア路線を担ってきたエアージャパンを母体とし、フルサービスキャリア(FSC)に比べ低価格な「第3ブランド」をアジア・オセアニア路線で提供する。

 JAL、ANAHDは従来のFSCの機材数を減らし、路線網も見直すなどして一時的に規模を縮小しつつ、成長事業とみなすLCCを強化する方針で一致している。ただ、LCC事業の拡大には課題が山積している。

 短期的にはFSCとLCCの間の価格面でのカニバリ(共食い)だ。

続きを読む 2/5 JALとANAで戦略に違い

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