フランクフルト行きの貨物便に使う米ボーイング「777F」は最大約100トンを積載できる貨物専用機
フランクフルト行きの貨物便に使う米ボーイング「777F」は最大約100トンを積載できる貨物専用機

 ANAホールディングス(HD)は6月10日、成田空港から独フランクフルトに向けて大型機を使った貨物専用便の運航を始めた。旅客便の減少で貨物スペースの供給が絞られており、運賃が上昇している。一方で貨物需要は旅客ほどは落ち込んでいない。世界の航空各社が少しでも旅客需要の落ち込みを補おうと対応を急ぐ。

 「専用便を飛ばして、不足している貨物のスペースを確保する」。こう話すのは、ANAHDの貨物事業を担うANAカーゴ(東京・港)の浦野敏央副センター長だ。機材は19年に新たに導入した米ボーイング「777F」。最大約100トン搭載できる大型機だ。

 6月は週1回往復し、7月も同様の規模での運航を検討している。10日にフランクフルトへ飛び立った777Fは半導体製造機器など65トンの貨物を搭載。折り返し便は一般貨物やワインなどを中心に100トンを積み、11日午前に成田へ戻ってきた。

 欧州の物流の玄関口ともいえるドイツと日本の間の貨物需要は旺盛だが、ANAHDは従来、フランクフルトへの貨物専用機を飛ばしてこなかった。羽田空港とフランクフルトを結ぶ旅客便を週14往復させる中で、旅客機の下部の貨物スペース「ベリー」を活用することで対応していた。ただ、新型コロナの影響で同路線が週5往復に減便された結果、需給が逼迫し、大型専用機の投入に至った。 

 通常、航空貨物の5〜6割は旅客便のベリーで輸送されている。新型コロナの感染拡大による減便は、貨物スペースの減少に直結した。一方、需要は医療・衛生物資を運ぶ特需が発生するなど、旅客需要ほどは落ち込んでおらず、貨物運賃の上昇につながっている。

 日本銀行によると、4月の「国際航空貨物輸送」「国内航空貨物輸送」の価格指数は前年同月比でそれぞれ約66%、約32%上昇した。航空貨物の価格指標「TACインデックス」によると中国発欧米行きの運賃は一時、コロナ感染拡大前の4倍以上に跳ね上がった。

 貨物に焦点を当てるのは、他社も同じだ。自前の貨物専用機を持っていない日本航空(JAL)は5〜6月に月1000便、旅客機を使った貨物専用便を運航。同社傘下の格安航空会社(LCC)、ジップエア・トーキョーは初就航を貨物専用便という形で迎えた(参考記事:LCCに吹きすさぶ逆風 JAL系は「貨物専用」で初就航)。

 こうした動きの背景には、インフラ企業として国際物流の役割を果たすというだけでなく、貨物が業績を下支えする側面に期待している事情がある。ANAHDは20年3月期の連結売上高1兆9742億円のうち1361億円が貨物・郵便だった。JALは全体の売上高が1兆4112億円で、貨物・郵便は916億円。旅客需要が急減した20年1〜3月期、両社の会社全体の売上高は前年同期比で約2割減った一方、貨物・郵便は数%の減少にとどまった。