新型コロナウイルスが航空業界に打撃を与える中、特に苦境に陥っているのが格安航空会社(LCC)だ。日本航空(JAL)傘下のジップエア・トーキョー(千葉県成田市)は6月3日に初就航を迎えたが、旅客利用が見込めず、当面は貨物専用便としての運航となる。フルサービスキャリア(FSC)に比べ高い搭乗率を保つことが前提のビジネスモデルが、新型コロナの感染拡大による航空需要の低迷で大きく揺らいでいる。国内外で急成長し、訪日外国人客の増加に寄与してきたLCCは生き残っていけるのか。

 6月3日夕方、成田空港。「ZIPAIR」と胴体に書かれた見慣れない外装の旅客機に、貨物がどんどん搭載されていく。その一方で、搭乗のためのタラップ(階段)を上る乗客の姿はまったく見られない。

 午後5時35分。機械部品や化学製品など13トンの貨物だけを積んだ旅客機はほぼ定刻通り、タイ・バンコクのスワンナプーム国際空港へと飛び立っていった。

ジップエアは貨物専用便という苦渋の策で第一歩を踏み出した(6月3日、成田空港)

「旅客便のスタートが第2段階」

 「ぜひスタートは旅客便でと思っていた。(事業開始の)第1段階が今日(3日)で、第2段階が旅客便のスタートだと考えている」。こう話すのはジップエア・トーキョーの西田真吾社長だ。

 同社はJALの完全子会社として2018年7月に設立された。JALはオーストラリア・カンタス航空などとの合弁で設立したジェットスター・ジャパン(千葉県成田市)でLCCを手掛けてきたものの、自社独自での進出は初めてだ。日本を発着する短距離路線のLCCには国内外の事業者が多く参入し、既に飽和状態であるため、国内では珍しい北米など中長距離路線の就航を目指す。「大西洋間の移動の10%以上はLCCが担っている。太平洋でも同じことが起きるはずだ」(西田社長)。5月に成田―バンコク線を就航させ、7月にはソウル線、そして今冬には本丸のホノルル線に進出する算段を描いていた。

 そこに襲来したのがコロナ禍だ。旅客需要は大きく減少。初就航先のタイは当局が国際線の旅客便の入国を一時的に禁止しているため就航を延期していた。

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