10連休を取得した人も多いであろう、今年のゴールデンウイーク(GW)。3年ぶりに「制限なし」で迎えたこともあり、空港や駅、観光地は大いににぎわいを見せ、航空・鉄道の利用者数も2021年に比べ大幅に増えた。ついに日本も「ウィズコロナ」の道を歩み始めたようにも思えるが、本格的な旅行需要の回復にはネックがまだ多く残っている。

 「こんな光景はコロナ禍前でも見たことがないかもしれない」。GW初日の4月29日朝、日本航空(JAL)のある社員は羽田空港の様子を目の当たりにしてこう漏らした。

GW初日の羽田空港は大混雑。満席の便が続出した(4月29日、羽田空港第1ターミナル)
GW初日の羽田空港は大混雑。満席の便が続出した(4月29日、羽田空港第1ターミナル)

 確かに、スーツケースを引いた家族連れがあふれ、保安検査場には大行列ができている。「コロナ禍前でも」というのは少し言いすぎかもしれないが、コロナ禍が巻き起こると同時に航空業界を担当し始め、事あるごとに羽田空港で取材してきた記者は少なくともこの2年間、こんな光景を見たことがなかった。

 JALの屋敷和子執行役員は「29日の予約率は(羽田)出発便で96%に達した」と明かす。全日本空輸(ANA)も29日の羽田発便の予約率は95%だったという。両社とも満席に近い予約を得ていたわけだ。今回のGWは5月2・6日の平日に休みを取って10連休とした人も少なくないだろう。結果、旅行需要の山はGW後半にも訪れた。

 4月22日時点で、4月29日~5月8日の国内線の予約数はANAが78万席強、JALが約80万席に達していたが、実際の利用者数はANAが96万人弱、JALは92万人弱まで増えた。ANAホールディングス(HD)の幹部は「GWに入っても予約が増え続けた。観光地の様子などを映像で見て、旅に出たい、旅に出てもいいんだと思った消費者は多いのだろう」と話す。実績はANAが前年比約1.9倍、JALも約2.3倍の水準で、コロナ禍前の19年と比べてもJALが8割、ANAも65%まで回復した。

 国際線もじわりと回復傾向が見え始めた。象徴的なのは米ハワイ便だ。旅行各社がGW出発分を皮切りにハワイ行きのツアー商品の販売を再開。子会社のLCC(格安航空会社)、ジップエア・トーキョー(千葉県成田市)を含むJALグループでは、GW中に運航するホノルル路線で約5000人の予約を得た。ANAも4月29日羽田発のホノルル便は利用率が9割近くに達した。GW中の国際線全体の利用者数はANAが前年比約5倍、JALが4.5倍弱となっている。

 「ウィズコロナのフェーズに入ったのではないか」。5月6日、2期連続の赤字となった22年3月期決算を発表したJALの赤坂祐二社長はこう手応えを語った。「需要の戻り方には波があるだろうが、21年のように大きく波打つのではなく、力強い回復(傾向)を見せるだろう」(赤坂社長)。JALは22年7~9月期に、国内線の旅客需要がコロナ禍前の95%ほど、国際線も約45%に回復すると見る。ANAは同期に国内線でコロナ禍前の8割、国際線で3割に需要が戻る見込みを立てる。

 一連の見立てを楽観的と見るか、はたまた悲観的と見るかは評価が分かれるところだが、GW中の空港や観光地のにぎわいを見れば、実現可能性は必ずしも低いとは言えないように思える。今回のにぎわいが生まれたのは感染状況を一定程度抑制でき、3年ぶりに行動制限などがないGWを迎えることができたから。需要の動向は感染状況や緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の有無に左右される。結局のところ、コロナ禍の動向次第で需要は左右されるわけで、このままウィズコロナへと歩みが進めば、需要も一定程度回復するのは間違いないだろう。

 ただ、もしこのままコロナと共生する日々を迎えられたとしても、観光業界には需要の「天井」を押し下げるネックが残っている。GWはそれが垣間見られた期間でもあった。

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