新型コロナウイルスの感染拡大により、結婚式をリモートで開催する取り組みが広がっている。イベントの演出やプロデュース事業を手掛けるスペサン(東京・文京)はリモートの結婚式のプロデュースに加え、ケータリング会社と提携しゲストの家に料理を届けるサービスを展開する。動画演出と料理、言い換えればデジタルとリアルを組み合わせた新たな祝いの場を実現しようとしている。

 「ジューンブライド」と言われるように、6月を中心に春から夏にかけては結婚式場やホテル、飲食店にとっては結婚関連イベントの稼ぎ時となる。ただ今年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大人数が同じ会場に集まる結婚式や披露宴が延期となるケースが相次いでいる。新型コロナの感染がいつ収束するかが見えないだけに、式を開くべきかどうか不安を覚えるカップルも少なくない。

 そうした中、ウェブ会議ツール「Zoom(ズーム)」などを使った「リモート結婚式」のサービスが広がりつつある。画面を通して、指輪の交換や誓いの言葉などをゲストに見守ってもらうというものだ。

 結婚式のプロデュース業のスペサン(東京・文京)が打ち出しているのは、オンラインでもリアルの場でも楽しめる結婚式のサービス。ケータリングサービスを提供するCRAZY KITCHEN(クレイジーキッチン、東京・品川)と提携し、招待されたゲストの家にフルコースの料理を届けるサービスを5月から始めた。

 式当日は、新婦や新郎と招待客が同時にメインディッシュの魚料理を皿に盛り付るなど、違う場所にいても同じ作業をするといったイベントもある。ウェブ経由で参加者がバラバラに祝うのではなく、デジタルでの動画演出とリアルの場での料理を楽しめるように組み合わせることで、コロナ禍においても参加者が一体感が得られる場を提供しようとしている。

Zoomのグループ分け機能も活用

 オンラインの良さが光るのが、ズームの「ブレイクアウトルーム」というグループ分けの機能だ。ビジネスの場では大人数での会議のあとに、小さなチームに分かれて話し合う際に使われることが多い。

 リアルの場での結婚式や披露宴では、新郎と新婦が招待客の円卓を回ることがあるが、時間が足りずゆっくりと話せないことも多い。ブレイクアウトルームの機能を使えば、あたかも招待客の円卓を回るように、「家族」「友人」「会社の知人」などのグループごとに会話を楽しむことができる。スペサンの植松健佑社長は「これからの結婚式は式場に集まるスタイルではなく、『密』を避けたスタイルも選択肢となる」と話す。今後は、スマートフォン上で結婚式用の特殊な拡張現実(AR)動画が表示されるサービスも検討する。

 矢野経済研究所(東京・中野)によると、2020年の国内のブライダル関連の市場規模は前年比5.7%減の2兆2400億円となる見通しだ。新型コロナの感染拡大により、4月から5月にかけて挙式や披露宴の延期・キャンセルが増えたことが主な要因だ。

 ウエディングプランナー向けのサービス「プラコレウェディング」などを提供する冒険社プラコレ(神奈川県鎌倉市)が1553人の女性に実施した調査によると、オンライン結婚式について「興味がある」と答えた人は13%にとどまった。「同じ空間で直接会いたい」ということもあり、オンラインでの開催に抵抗がある人は多いようだ。

 それでも植松氏は、今後の結婚式にはビジネスチャンスが広がっていると指摘する。「これまの結婚式は1つの場所や時間に縛られていたが、これからは会社のグループ、大学時代のグループなど、場所や時間にかかわらずにグループごとに分けて結婚式を実施できる。そうなれば招待客とより濃密なコミュニケーションを取れ、結婚式のスタイルの変化が大きなビジネスチャンスになるのではないか」と話す。

 在宅勤務やウェブ会議など、新型コロナをきっかけに働き方は大きく変わった。伝統的な冠婚葬祭の場も、変化を迫られている。

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