新型コロナウイルスの感染拡大が「雇用クライシス」を招いている。経済の低迷が長期化する懸念がある中、企業はどのように危機に向き合ったらいいのか。創業時から一貫して「雇用維持」を重視してきた日本電産の永守重信会長CEOに話を聞く。リーマン・ショックのときにはどのような取り組みで危機を乗り越えたのか。そして今回のコロナ・ショックにはどう対応するのか。

第1回:新型コロナの“需要消滅”が招く雇用危機、「倒産する」悲鳴続々
第2回:新型コロナで工場休止 トヨタ、日産の城下町で見た雇用危機
第3回:トヨタの“師”が語る「新型コロナで景気が悪化しても雇用は守る」

日本電産の永守重信会長CEO(写真:菅野 勝男)
日本電産の永守重信会長CEO(写真:菅野 勝男)

永守会長はかねて「雇用を守る」ことを重視してきました。新型コロナウイルスによる経済危機と影響度を比較されるリーマン・ショックのときも、人員削減をせず乗り切りました。

永守重信・日本電産会長CEO(以下、永守氏):創業以来、雇用を維持することを常に重視してきました。社会への貢献は雇用の維持と思ってきたからです。リーマン・ショックのときも同じです。

 あの時は、第4四半期(2009年1~3月期)には売上高がピーク時から半減するほど落ち込み、業績は急落しました。

 しかし、皆で耐えてもっと強くなろうと言い、社員には賃金を5%下げてもらい、役員は報酬を半減、自分はゼロにしました。その一方で、売上高が半減しても同じ利益を出せる体制を目指して徹底したコスト改革に乗り出しました。それが「WPR(ダブル・プロフィット・レシオ)」という運動です。間接部門、現場を問わず世界の社員から、コスト削減のアイデアを出してもらい、どんどん実行していきました。アイデアは30万点集まりました。

 その成果で2009年1~3月期、電子部品業界では巨額の営業赤字が続出する中、うちは10億円の営業黒字を計上しました。そして賃金カットは夏以降、順次解除し、業績が戻った後カット分に1%の金利を乗せて臨時ボーナスとして返しました。

そもそも、なぜ、雇用を守ることを重視してきたのですか。

永守氏:なぜ雇用を守ることを重視してきたのかというと、創業後の苦しい時期には、一流大学出というわけではない人たちばかりでしたが、皆が一生懸命働いて日本電産を伸ばしてくれたからです。だから私は、財産をなげうってでも雇用は守ると言ってきました。それが日本企業の強さだと思ったからです。

 おかげでリーマン・ショックのときは、営業利益は翌期(2010年3月期)には、リーマン・ショック前の2008年3月期を超えました。売上高が元に戻るには5年かかりましたが。

次ページ 景気の悪化は立ち直るまでに3年はかかる