新型コロナウイルスの感染拡大が、雇用に深刻な影響を及ぼしている。国際労働機関(ILO)は、一時解雇(レイオフ)や賃金削減などの雇用リスクにさらされている人口の数を12億5000万人と推計。全世界の労働人口の約38%にも相当する。ロックダウン(都市封鎖)などで外出が制限されたり店舗の営業が禁止されたりしたことで需要が消滅。飲食や小売りなど接客を必要とする産業から、アパレルや自動車といった幅広い製造業にも「コロナ・ショック」は広がっている。

世界を襲う雇用クライシス
世界を襲う雇用クライシス
出所: 経済成長率と損失は国際通貨基金 (IMF)、雇用関係は国際労働機関 (ILO)の予測
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 ウイルスが人の移動を介して全世界に広がったように、世界を襲う「雇用クライシス」に当然、日本も飲み込まれる。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは、「失業率はワーストケースで2021年第1四半期までに4%程度まで上昇する可能性がある」と試算する。コロナ・ショック直前の失業率は約2.5%とほぼ完全雇用状態だったため、そこから上昇しても失業率のピークはリーマン・ショック時(5.5%)ほどにはならなそうだ。しかし、危機直前からの悪化度合いは同等かそれ以上になる可能性がある。

 感染拡大を防止するための外出自粛の影響で、売り上げが激減した飲食店などサービス業を営む小規模事業者からは、悲痛な声が上がっている。

 「4月分の給料は払えない。辞めてくれと頭を下げた」

 そう打ち明けるのは、東京都内でワインレストランなど数店舗を展開する外食企業の男性幹部だ。異変が始まったのは、2月末に安倍晋三首相が全国の公立学校を対象に休校要請をしてからだ。消費マインドが落ち込み、3月の売上高は5割減ったという。

4月7日の緊急事態宣言で人出が減った新宿・歌舞伎町
4月7日の緊急事態宣言で人出が減った新宿・歌舞伎町

[4月20日公開] 新型コロナの“需要消滅”が招く雇用危機、「倒産する」悲鳴続々

「雇用クライシス」が最初に顕在化しているのが、飲食店などサービス業の小規模事業者だ。政府は緊急経済対策で実質無利子・無担保の融資や雇用調整助成金の拡充、給付金などを用意し、雇用リスクを抑えようとしている。だが、ビジネスの現場では刻々と事態が悪化している。

 感染拡大が止まらない中、政府は4月16日、緊急事態宣言の対象を7都府県から全国に拡大した。より一層の外出自粛でこれまで以上に日本経済が凍り付くことは必至だ。既にANAホールディングス(HD)、日産自動車、リクルートHD、三越伊勢丹HDなどが金融機関に非常時のための融資枠の設定を要請。小規模事業者だけではなく、大企業の資金繰りも懸念される。感染拡大が長期化すれば、雇用にメスを入れざるを得なくなる。

 動向を注視すべきなのは、産業の裾野が広い自動車業界だ。これまでも工場の一時休止などで生産調整をしているが、長期化の兆しからさらなる生産調整に踏み込む動きが出ている。トヨタ自動車は4月15日、グループ会社を含めて国内の完成車全18工場で生産調整に踏み切ることを発表した。今後、2~3割減産という事態になれば、工場で働く期間工や派遣社員の「雇い止め」に発展する可能性もある。

 既に、多くのメーカーは期間工の募集や人材派遣会社への発注をほぼストップしている模様だ。高級車「レクサス」を製造し、北米の需要減少の影響を大きく受けたトヨタ自動車九州の宮田工場(福岡県宮若市)。トヨタの工場の中ではこれまでに最も長く休止した。派遣社員として働く30代の男性は4月上旬、「いろいろ起きていることは知っている。会社からは何も聞いていない。この先どうなるか」と不安を口にしていた。

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