国鉄が分割民営化されて35年。JR各社では今年、1985年卒の新社長が3人生まれるなど、国鉄時代をほぼ知らない“JR世代”が経営を担う時代に入った。5回目に登場したJR東日本の市川東太郎副社長は「ワンマン運転や自動運転で鉄道事業のコストを下げていく」と述べた。それを支える技術開発を担うのが、イノベーション戦略本部長の伊勢勝巳副社長。88年入社の伊勢氏に、次世代の鉄道ビジネスを支える技術革新について聞いた。

伊勢勝巳(いせ・かつみ)JR東日本代表取締役副社長
伊勢勝巳(いせ・かつみ)JR東日本代表取締役副社長
1988年東京大学工学部土木工学科卒、JR東日本入社。2003年に鉄道事業本部設備部(保線)課長。13年にJR北海道に出向し、同社の保線部門の立て直しに尽力した。15年にJR東に戻り、執行役員総合企画本部投資計画部長、執行役員鉄道事業本部設備部長を歴任。18年に常務執行役員、21年に代表取締役副社長。現在は社長補佐(全般)、イノベーション戦略本部長。(写真=都築雅人)

 長年、保線分野の業務に携わってきました。昼間は営業列車が走っていますので、歩いて線路のゆがみを調べたり、保線作業をしたりするのは主に夜中。夜ばっかりの仕事というのは労働環境が厳しく、なかなか人が集まらないのです。

 そこで今、私が「世界一の線路のレントゲン」と呼んでいる技術に挑戦しています。営業列車に取り付けた加速度センサーとカメラで線路の変化を検測する取り組みです。加速度を2回積分すると変位、つまり線路のゆがみが分かります。ボルトが緩んでくるとナットの高さが上がりますが、これは車体の床下に取り付けた距離を測定できるカメラ(プロファイルカメラ)と濃淡が分かるカメラ(ラインセンサーカメラ)の画像で判定できます。これらのデータで悪い部分を見つけて、現地で確認をすることで検測の効率を上げられます。

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