東海道・山陽新幹線のインターネット予約サービス「エクスプレス予約(EX予約)」が20周年を迎えた。登録会員数は750万人を超え、ネット予約やチケットレス乗車が当たり前の光景になった。首都圏や関西圏に販売拠点が少ないJR東海の顧客囲い込み策として始まったEX予約だが、2022年春にはJR東日本が管轄する都区内や横浜市内などの駅でも、指定席券売機などで切符が受け取れるようになる。新型コロナウイルス禍により、ネット予約比率を高めて有人窓口を閉鎖したいJR各社の方針が一致したためだ。今後は、宿泊や観光プランなども予約できるようにする予定。コロナ収束後を見据え、ビジネス需要だけでなく観光需要も取り込む予約プラットフォームの役割を担う。

 なぜインターネットで予約した切符が出張先で受け取れないのか――。東海道新幹線を利用したとき、そんな思いを抱いたビジネスパーソンは少なからずいるのではないだろうか。JR東海が運営する「エクスプレス予約(EX予約)」「スマートEX」で予約した切符は首都圏にあるJR東の駅では受け取れない。逆に、JR東が運営する「えきねっと」で予約した切符は、関西地方や中部地方では受け取れない。そんな不便な状況が22年春、ついに改善される。両社が切符の相互受け取りを始めるためだ。

 JR東海の営業本部システム開発・運用グループの中野久司氏は「両社ともチケットレス化を進めており、切符の発券数は減ってきている」と話す。コロナ禍による業績悪化を受け、JR各社は有人の「みどりの窓口」を閉鎖し、券売機への置き換えを進めている。そのためにはネット予約の比率をさらに高める必要があり、両社の方針が一致した。

東海道新幹線のインターネット予約比率は年々高まっている
東海道新幹線のインターネット予約比率は年々高まっている

 EX予約が生まれたのは今から20年前の01年のことだ。長年、不便な状態が続いた背景に何があったのか。

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