クレジットカード大手の米ビザが日本のローカル鉄道やバスに熱い視線を注ぐ。都市部ではSuica(スイカ)などのICカードが普及しているものの、地方の交通機関ではキャッシュレス化が進んでいない。残された空白域を巡り、ビザとJRグループの綱引きが始まっている。

 京都府と兵庫県を走る京都丹後鉄道に11月25日、ICカードサービスが導入された。大半が無人駅の京都丹後鉄道は、列車もワンマン運行。これまでは運賃を運転士に現金で支払う仕組みだったが、ICカードで支払えるように駅や車内にカードリーダーが設置された。

 乗客がリーダーにかざすのはSuica(スイカ)やICOCA(イコカ)などの交通系ICカードではない。クレジットカードのVisa(ビザ)カードだ(プリペイドカード、デビットカードを含む)。米ビザの日本法人ビザ・ワールドワイド・ジャパン、三井住友カードが決済基盤を提供した。

車両に設置されたリーダーにカードをかざして乗車できる
車両に設置されたリーダーにカードをかざして乗車できる

 ビザはカードを端末にかざすだけで決済できるサービスを全世界で展開する。米ニューヨーク、英ロンドン、豪シドニーなど200の都市では公共交通機関にも導入されているという。ただし日本では、コンビニエンスストア、ファストフードなどの一般加盟店で普及が進むものの、交通機関が導入した実績は少ない。都市部ではすでにJRなどが展開する交通系ICカードが普及しているからだ。

 しかし京都丹後鉄道のような地方の鉄道やバスではキャッシュレス化が進んでいなかった。ビザはこの空白域に着目し、4年前から売り込んできた。ビザで交通事業者を担当するデジタル・ソリューションディレクターの今田和成氏は「地方の公共交通機関は大都市の鉄道のように他路線との相互乗り入れがなく、自社の判断で導入しやすい」と話す。

 地方の公共交通機関でキャッシュレス化が進まない大きな原因の1つが、導入や運用にかかるコストの高さだ。やや古い数値になるが、熊本市の公共交通6事業者が2013年に共通ICカードの導入を検討した際の資料が公表されている。それによると、JRなどと相互利用できる交通系ICカードは導入に約13億円、運用に毎年1億円強かかると試算された。地域独自のICカードなら導入コストが約12億円だが、運用コストは毎年3000万円と安い。

 検討の結果、熊本市では市電が交通系ICカード、民間バス事業者が独自のICカードを導入。判断が分かれた。全国の主要な交通機関で相互利用できる交通系ICカードは出張者や旅行者にとって便利だが、地域に住む人の利用が中心の民間バス事業者は独自ICカードで十分と判断したわけだ。

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