荷物輸送に取り組む鉄道会社の現場を追う連載の3回目は、JR東日本を取り上げる。12月10日から、新函館北斗駅(北海道北斗市)から東京駅へ向かう東北・北海道新幹線「はやぶさ」の一部列車が、途中の大宮駅に5分間停車するようになる。40箱の荷物を降ろす時間を確保するためだ。JR東の担当者は大口荷主を開拓するなかで、「旅客最優先」を改めざるを得ないと痛感している。

JR東日本で荷物輸送を担当する浜田剛氏。同社は「はこビュン」のサービス名で荷物輸送を事業化した
JR東日本で荷物輸送を担当する浜田剛氏。同社は「はこビュン」のサービス名で荷物輸送を事業化した

 新幹線はいかに早く目的地に到着するかというスピードアップの歴史だった。しかし、JR東は12月10日、それに逆行する異例の取り組みを始める。

 新函館北斗駅から東京駅へ向かう東北・北海道新幹線「はやぶさ」のうち、新函館北斗駅から午前7時38分と午前9時35分に出発する2本について、東京駅までの所要時間をこれまでより4分間延ばす。

 4分延長する理由は、大宮駅(さいたま市)での停車時間を、これまでの1分間から5分間にするため。大宮駅で乗降する人が増えたからではない。函館でその日の朝に積み込んだ鮮魚類などを降ろすためだ。

 JR東日本の事業創造本部で列車荷物輸送・SCMプロジェクトを担当する浜田剛課長は「新幹線に積み込める最大量である40箱全てを降ろせる時間を確保した」とした上で、こう続ける。「乗客にも荷物輸送をしていることやその意義を広く知ってもらい、理解を得たい」

JR東が持つ2つの武器

 鉄道会社のなかで先陣を切って荷物輸送に取り組んできたJR東。直面する1つの壁がある。

 「荷主の開拓を進めていくなかで、大宮駅の重要性を認識するようになった」。浜田氏はこう話す。

 JR東が荷物輸送への取り組みを始めたのは2017年。もっとも当時は、駅ナカで開催していた東日本エリアの物産販売イベントの魅力を高めるのが主眼だった。朝取れた野菜や果物を新幹線で運び、東京駅で販売するためだった。その後も駅ナカでの販売が前提で、荷物輸送そのものをビジネスにしようと考えるようになったのは、新型コロナウイルス禍で乗客が急減してからだ。

 JR東には、JR他社にはない大きな武器が2つある。1つは首都圏という大きなマーケット。もう1つは、その首都圏から放射状に伸びる新幹線の路線網だ。東北新幹線は北海道新幹線、秋田新幹線、山形新幹線との直通運転により、東北各県の県庁所在地全てと東京駅を乗り換えなしで結ぶ。さらに大宮駅で上越新幹線、高崎駅で北陸新幹線が分岐し、新潟、長野、富山、石川県までもカバーしている。

見えてきた課題

 このような地の利を生かせば荷物輸送自体がビジネスになると考えたJR東は、子会社のジェイアール東日本物流を活用し、駅から先の配送先まで一貫輸送する体制を整えることを決定。20年夏から営業活動を開始し「新幹線で運ぶだけでなく、トラックで駅ソトの店舗まで配達します」とアピールして回った。これに北海道や北陸の水産業者などの卸が関心を示し、21年4月から定期輸送が始まった。

 新函館北斗駅からはイカやホタテ、ホッケなどが1列車に最大30箱積み込まれ、飲食店舗に配送されている。金沢駅(金沢市)からも鮮魚類が最大30箱積み込まれ、イトーヨーカドー、魚力、ライフなどの小売店で販売。いずれも朝、水揚げされたものを夕方には店頭に並べられるのが売りだ。

「様々な店舗と取引がある卸業者と組むことで、配送先を一気に開拓できた」(浜田氏)。しかし、スーパーマーケットなどへ配送を始めるなかで課題も見えてきた。

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