新幹線では車内販売に使われていたスペースに置かれた。最大で30箱積めるという
新幹線では車内販売に使われていたスペースに置かれた。最大で30箱積めるという

 みずほ606号は最高時速300㎞で東へと走り、わずか45分で終着の新大阪駅に到着した。ここで2度目の乗り換えとなる。今度は次の列車まで48分と余裕があるため、駅構内の手荷物預かり所でしばらく待機することになる。そして午後3時26分発の京都行き特急「スーパーはくと8号」に載せられて、目的地である京都駅へと向かう。

ハサミを振りかざす生きたカニ

 京都駅に着いたのは午後3時48分。新大阪から京都までは新快速が15分間隔で走るなど、列車本数が多い区間だ。しかし、わざわざ特急列車を待ったのは、客室に置くのではなく荷物専用のスペースを確保できる上、京都駅終着で積み下ろし時間に余裕があるからだ。

 ホームから荷物用の通路を通って、ジェイアール京都伊勢丹に到着したのは午後4時だった。箱を開けると生きたカニがハサミを振りかざし、店員からは「すごく生きがいい。これは間違いなくおいしいぞ」と感嘆の声が上がった。

 京都に着いたカニ6杯のうち3杯は得意客が予約済み。残りの3杯が店頭で抽選販売された。市価2万4000円相当のところJR西のPRも兼ねて半値の1万2000円での販売となったこともあり、抽選で購入者を決めるほどの人気ぶりとなった。

ジェイアール京都伊勢丹で販売されたカニ。数量が少ないため抽選販売となった
ジェイアール京都伊勢丹で販売されたカニ。数量が少ないため抽選販売となった

 鉄道による荷物輸送はJR東日本やJR九州がすでに事業化している。JR西は後発となるが、それはハードルが高い輸送に取り組もうとしたからでもある。

 JR東とJR九州は積み込みや積み下ろしにかかる時間を考慮し、基本的に始発駅で積み込み、終着駅で積み下ろすようにしている。JR東は12月から東北新幹線の途中停車駅である大宮駅で荷物の積み下ろしを始めるが、そのために停車時間を1分から5分へと延長する予定だ。

 これに対してJR西は今回、停車時間が1~2分と短い途中停車駅での積み込みや積み下ろしを実施。さらに在来線特急と新幹線を乗り継ぐリレー輸送も行った。

鉄道の強みはネットワーク

 荷物輸送を担当する営業本部の内山興課長は「鉄道輸送の強みは路線のネットワーク」と話す。トラック輸送の場合、各エリアで集荷した荷物を物流拠点に集め、大型トラックに積み替えて夜間に運び、再び物流拠点で小分けにして配送する。そのため早くても届くのは翌朝となる。

 これに対して鉄道なら、日中に走っている在来線と新幹線を組み合わせることで、即日配送が可能だ。即日配送では飛行機もライバルとなるが、空港が市街地から離れていること、鉄道と比べると路線ネットワークが限られていることなどがネックになる。例えば今回の米子~京都間の場合、空路なら一旦羽田に運ぶしか方法がない。

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