やくも14号の岡山駅到着は午後1時38分。京都駅まで運ぶには、ここで山陽新幹線に乗り換える必要がある。指定された列車は午後1時53分発の「みずほ606号」新大阪行き。乗り換え時間は15分ある。

 だが、余裕があるとは言えない。自ら歩いて移動する旅客なら別だが、荷物輸送では係員による積み下ろし、台車による移動、そして再度の積み込みが必要だ。

 岡山駅でも米子駅と同様、乗客が最優先。すべての乗客が降車した後、岡山駅で待ち構えていた係員による積み下ろしが始まった。台車に載せられたカニ5箱は、エレベーターに載せられて1階の在来線ホームから2階のコンコースへ。そして乗客の合間を縫うように新幹線乗り換え改札へと進み、3階の新幹線ホームへと向かうエレベーターに載せられる。

間一髪、乗り継ぎ成功

 新幹線ホームに、なかなかカニを載せた台車がやって来ない。「間もなく、24番乗り場に、みずほ606号、新大阪行きが参ります」。間一髪、案内放送が流れ始めたときようやく台車が現れた。エレベーターも旅客優先で、子連れ客や高齢者らを先に乗せていた。

旅客用のエレベーターを使って岡山駅の新幹線ホームに運ばれた
旅客用のエレベーターを使って岡山駅の新幹線ホームに運ばれた

 みずほ606号は定刻に到着したが、ドアが開くとほどなく出発のベルが鳴り始めた。岡山駅の停車時間は1分間しかない。米子駅よりもタイトだ。ただ、新幹線は特急やくもと違い、車内販売の商品などを積み込むための専用ドアがある。そちらのドアを使い、乗客の乗り降りが終わるのを待たずに積み込み作業が行われた。事前の計測で、30秒で4箱積み込めることは確かめていた。

 実は、ここで新幹線に積み込まれたのは5箱のうち2箱だけ。3箱は岡山駅の売店で販売するために残された。本来ならば2階のコンコースで仕分けをしたほうが効率がいいが、事前の検証でそのための時間的な余裕がないと判断。いったん全てを3階の新幹線ホームまで運んだのだ。それだけ綱渡りの乗り継ぎだ。

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