国鉄が分割民営化されて35年。JR各社では今年、1985年卒の新社長が3人生まれるなど、国鉄時代をほぼ知らない“JR世代”が経営を担う時代に入った。世代交代で何が変わるのか。当事者たちに聞く。1回目は2022年6月にJR貨物の社長に就任した犬飼新氏。1985年にゼネコンの間組(現安藤ハザマ)に入社し、2003年にJR貨物に中途入社した。

犬飼新(いぬかい・しん)代表取締役社長兼社長執行役員
犬飼新(いぬかい・しん)代表取締役社長兼社長執行役員
1985年早稲田大学教育学部卒、間組(現安藤ハザマ)入社。03年にJR貨物に中途入社。15年に執行役員関東支社長、17年に取締役兼執行役員鉄道ロジスティクス本部営業統括部長。18年に取締役兼常務執行役員鉄道ロジスティクス本部長兼営業統括部長、20年に取締役兼常務執行役員経営統括本部長となり、22年から現職。(写真=古立康三)

2022年6月24日に開かれた社長交代の記者会見で、真貝康一前社長(現会長)は社長交代の理由について「社員の9割がJR入社となる中、いかにスムーズに次のJR世代にバトンタッチしていくかを考えた」と話していました。

犬飼新JR貨物社長(以下、犬飼氏):国鉄世代は(分割民営化でJR各社が発足しても)もともと同じ会社の仲間であったわけですが、JR世代は入社時点からそれぞれ会社が違います。仲間意識という点では、国鉄世代よりも当然希薄になっていると思います。

 真貝が申したように、これからは民営化してから入社した人間、あるいは私のような中途入社の人間が、JR各社のつながりを保ち、民間会社として今後、事業をどう運営するかを考えていく。そして次世代につないでいくことが必要だと感じています。

犬飼社長は1985年卒ですが、国鉄に入社されたわけではなく、大手ゼネコンの間組(現安藤ハザマ)を経て、2003年にJR貨物に中途入社されたのですね。

犬飼氏:正直にお話しすると、当社がどういう成り立ちで、どういう状況にあるのか、中途入社するまでは深い知識があったわけではありません。もちろんJR貨物という社名と、貨物列車を走らせている会社だということは知っていましたが。

 もともとゼネコンで営業をやっていて、その後1年間だけ人材派遣ビジネスに転職していました。しかし、ゼネコンのように現場がある会社で、営業ノウハウを生かした仕事をしたいと思い、キャリアを思い悩んでいた。そんなときにたまたま当社が人材採用をしていて、応募したのです。

国鉄末期からJR発足直後は厳しい経営状態で採用が凍結されていました。その“空白域”がまさに犬飼氏の世代だったと。

犬飼氏:卒業年次で1985年前後の世代は、採用がほとんどなかったそうです。私が中途入社した頃、現場の社員には私と同じ世代がいましたが、経営幹部は数人しかいない状況でしたね。

JR貨物に入社されてからはどのようなキャリアを積まれたのでしょうか。

犬飼氏:ゼネコンでの営業経験を生かせるだろうということで、まずは東京営業支店の副支店長、その後支店長を命じられました。東京貨物ターミナル駅、隅田川駅という2つの貨物駅の収入を計画し、数値目標を達成する役割です。その後は広島支店長、北海道支社長などを歴任。営業だけでなく現場の安全管理など、大きな意味での管理職を経験しました。

品川区の大井埠頭近くにある東京貨物ターミナル駅
品川区の大井埠頭近くにある東京貨物ターミナル駅

取締役になってからも、営業統括部長を長く務められました。鉄道貨物輸送を荷主にどうアピールしてこられたのですか。

犬飼氏:一番は環境特性です。トラックと比べて、二酸化炭素(CO2)排出量は約10分の1。(鉄道やフェリーなど環境負荷が少ない物流を選ぶ)モーダルシフト、つまりトラックから鉄道に変えていただくだけで、CO2排出が約10分の1になることをまず売りにしています。

 さらに最近は「2024年問題」といわれるトラックドライバーの働き方改革への対応が迫られています。貨物列車は運転士1人で、最大トラック65台分の貨物を輸送できます。こういった効率性の良さを生かせば、長距離トラックドライバーの働き方、生活を改善できます。ドライバー不足の解消にもつながります。

 それから貨物列車は基本的に毎日同じ時間に運行しています。必要なときに、ぱっと使っていただけるのも良さだと思います。

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