もしかしたら個人的な「慣れ」によるものかもしれないと思ってJR東海に確認してみたところ、改良型では先頭形状を変更して空気抵抗を約13%低下させたことや、車内の騒音を低減したことが影響しているかもしれないとのことだった。

天井は吸音効果がある素材に覆われている
天井は吸音効果がある素材に覆われている

 乗り心地の滑らかさでは、まだ新幹線のレベルには到達していない。しかし飛行機ほどの揺れはなく、1時間程度の乗車であれば、さほど気にならないと感じた。国土交通省が技術開発は完了したとお墨付きを与えているのもうなずける。

 長年「夢の乗り物」の域を脱せなかった超電導リニアだが、1962年の研究開発から60年の時を経て、ようやく現実のものになろうとしている。

 その姿を一番実感できるのは、名古屋駅周辺だろう。リニア中央新幹線の名古屋駅は、南北方向に走る東海道新幹線・東海道線などと交差、すなわち東西方向に延びる形で設置される。地下駅となるが、地表から掘り進む開削工法で建設されるため、駅周辺ではビルの立ち退き・解体が進んでいる。

 現在は解体した建物の地下部分など支障物を撤去する準備工事段階だが、更地になった部分から、将来の駅のスペースが手に取るように分かる。

リニアの名古屋駅建設現場。手前から奥へと細長く用地が延びていることが分かる
リニアの名古屋駅建設現場。手前から奥へと細長く用地が延びていることが分かる

 首都圏側ではJRと京王電鉄が乗り入れる橋本駅(相模原市)の駅前で、神奈川県駅(仮称)の掘削工事が進む。移転した神奈川県立相原高校の広大な跡地を工事ヤードとして活用し、国内では珍しい露天掘りが行われている。この迫力ある工事現場が、10月1~4日の4日間、周辺住民をはじめとする一般客に公開された。掘削現場ののり面にプロジェクションマッピングを投映する「さがみはらリニアビジョン」というイベントで、事前申し込みした約2000人が参加した。

イベントでは工事現場でプロジェクションマッピングが投映された
イベントでは工事現場でプロジェクションマッピングが投映された

 点灯セレモニーには、JR東海の金子慎社長や神奈川県の黒岩祐治知事が登壇。黒岩知事は「2027年の開業に向け、国家プロジェクトとして進めていく」「国家プロジェクトを盛り上げていく機運が高まってきた」「住民の皆さんが国家プロジェクトに協力してくれている」などと、何度も「国家プロジェクト」という言葉を持ち出した。

着工のめどが立たない約10キロメートル

 実はその1週間ほど前、静岡県の川勝平太知事が「神奈川県が完全に27年の開業を不可能にしたと思う」と発言し、物議を醸していた。

 東京から名古屋の間で工事が着々と進むなか、静岡県の大井川上流部をかすめるようにトンネルで通過する、わずか約10キロメートルの着工のめどが立っていない。建設残土の処理や大井川の水資源の保全を巡り、静岡県の理解を得られていないためだ。国交省を交えて協議を行っているが、膠着状態は3年以上続いている。JR東海は静岡工区に着手できないことを理由に「27年の開業は困難」としている。

 川勝知事の発言は、静岡工区以外にも開業遅れの理由はあるという主張だった。具体的には、相模原市に設けられる車両基地の用地取得が遅れていることに触れ、取得交渉の実務を担当している神奈川県をやり玉に挙げたのだ。これに対して神奈川県の黒岩知事は「セレモニーの前に現地をきちんと見てきた。外から見ただけでは分からないが、住宅が建っているところでは8割が(用地売却を)了承されている。27年の開業に向けて進んでいけると実感した」と反論した。

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