公共交通を維持する財源として「交通税」の創設を公約に掲げ、2022年7月の滋賀県知事選で3回目の当選を果たした三日月大造氏。近江鉄道の存続問題などに関わる中で、鉄道事業者や利用者の負担、国からの補助に頼るだけでは公共交通は立ちゆかなくなるという危機感があると語る。
![滋賀県知事 三日月 大造[みかづき・たいぞう]氏](https://cdn-business.nikkei.com/atcl/gen/19/00148/101200085/p1.jpg?__scale=w:500,h:333&_sh=0e10700e20)
滋賀県は鉄道交通の要衝として発展してきました。これからも持続的に発展させるには、公共交通の利便性なくしては難しい。しかし今、人口減少や新型コロナウイルス禍による利用客の減少で減便が起きています。
中でも、JR琵琶湖線(東海道線・北陸線)が21年10月と22年3月のダイヤ改正で減便されたインパクトは大きい。JR西日本からすると(京阪神)エリアの端っこかもしれませんが、滋賀県にとっては基幹の路線。長浜、米原、彦根、近江八幡、どの町も中心に駅があって京都や大阪と結ばれています。

滋賀県南部は京都、大阪のベッドタウンとして発展してきて、数少ない人口増加地域です。どれくらいの運行頻度でどれくらいの所要時間なのかが、選ばれる街になるかどうかの分岐点になります。資産価値にも直結し、死活問題と言えます。県内の市町村に意見を聞くと「不便になった」「以前の運行本数に戻してほしい」という話をたくさん聞きます。
滋賀県ではもう1つ、近江鉄道の存廃問題があります。約120年の歴史がありますが、施設や車両の老朽化が進んでいました。16年ごろから議論を始めて、鉄道施設を県を含む沿線自治体が保有する「上下分離方式」で存続させることを20年3月に決めました。コロナ禍の後だったなら、この合意形成はさらに難しくなっていたと思います。
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コロナ禍、人口減、鉄道を襲ういくつもの苦難。それでも、現場のハートは燃えている! 鉄道が担う公共交通という役割を残し、守ろうと奮闘する現場の人々の思いを追って、日経ビジネスの「鉄」記者が自ら駆け回ってきました。日本全国の鉄道の、現場の挑戦、苦闘、そしてトンネルの向こうを目指す生の声を伝えます。
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