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コロナ禍で苦しい経営が続く鉄道各社の生き残り策を探る本シリーズ。上編「通勤需要半減の衝撃、コスト減で補えず」では通勤需要が激減し、コスト削減では補えない規模の減収が発生している状況をまとめた。下編では、通勤者が減った時代に提供できる価値を鉄道会社が模索する様子をリポートする。

所沢駅(埼玉県所沢市)を最重要エリアに位置づける西武ホールディングスは9月に商業施設「グランエミオ所沢」をオープンした

 「所沢はベッドタウンからリビングタウンに変わる。新型コロナウイルスによる行動変容を先取りする形で発展させていく」。西武ホールディングスの後藤高志社長は9月、所沢駅(埼玉県所沢市)直結の商業施設「グランエミオ所沢」の開業式典でこう宣言した。

 所沢に「働く、学ぶ、暮らす、遊ぶ」の4要素をそろえることで、その先にある狭山市や入間市、飯能市などの活性化にもつながるというのが西武の戦略だ。例えば狭山市は1994年の16万2000人をピークに人口減少が続き、現在は15万人。都心までの距離があだとなってきたが、所沢までなら電車でわずか10分だ。都心までの移動需要が減っても、沿線の人口を少しでも増やし、エリア内の移動を促進する。

「10年先の想定がいきなり来た」

 西武はコロナ禍の前から、働き方改革と人口減少によって鉄道需要の減少は避けられないと想定。30年先を見据え、今後10年間で何をすべきか、沿線を7つのエリアに分けて戦略を練っていた。都市交通や沿線事業を担当する田中雅樹・第一事業戦略部長は「コロナによって、10年先の想定がいきなり来てしまった」と驚きを隠さない。

 2020年代中ごろの完成に向けて、所沢駅近くにある車両工場跡地の再開発にも着手する予定。商業施設を中心にしつつも、テレワークができるスペースや保育施設など、コロナ後の行動変容に即した施設を入れられないか検討を始めているという。「長期的な人口減を想定した取り組みはコロナ禍が招いた社会変容に合っていた。取り組みのスピードを速める」と田中部長は話す。