千葉県のいすみ鉄道、新潟県のえちごトキめき鉄道で公募により社長に選ばれ、ローカル線の維持・再生に汗をかいてきた鳥塚亮氏。ローカル線の収支をできる限り改善したうえで、それでも足りない部分は地元からの支援を受ける必要があると語る。そのために、都会など外から人を呼び込む存在になるべく様々な工夫をしてきた。そんな鳥塚氏から見ると、JR各社が公開した線区別収支の数値には大きな問題があると話す。
![えちごトキめき鉄道社長 鳥塚亮[とりづか・あきら]氏](https://cdn-business.nikkei.com/atcl/gen/19/00148/100400082/p1.jpg?__scale=w:500,h:375&_sh=0d00640dc0)
私は2009年から18年まで千葉県の第三セクター「いすみ鉄道」で社長を務めた後、19年からは新潟県の第三セクター「えちごトキめき鉄道(トキ鉄)」で社長をしています。
まだ40代のときに英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズを辞めてまでいすみ鉄道の社長公募に手を挙げたのは、ローカル鉄道が存続するための正念場だと思ったからです。
いすみ鉄道は特定地方交通線といって、国鉄が「利用客が少ないからバス転換でいい」と廃止を決めた路線です。これに対して地元が「なにくそ」と思って第三セクター鉄道として存続させました。ただし、私が社長になったとき、会社設立から約20年がたって車両の老朽取り換えなどが迫ってきていた。赤字経営ですから、株主である沿線自治体が「車両の購入費用がかかるくらいなら、廃線にしよう」と言うかもしれない。10年以内に転機が訪れるのが見えていました。
私は、鉄道を外から人を呼び込む「地域の看板」にしようと考えました。JRで引退した古い車両を購入して走らせたり、レストラン列車を企画したりと、ローカル鉄道の新たな使い方を打ち出したのです。結果的に赤字経営でも、地元にその意義が認められ、存続できるメドが立った。第三セクター鉄道のなかでも経営状態が悪いいすみ鉄道が存続できたということは、他の路線もやる気を出せば生き残れることを示せたと思います。
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コロナ禍、人口減、鉄道を襲ういくつもの苦難。それでも、現場のハートは燃えている! 鉄道が担う公共交通という役割を残し、守ろうと奮闘する現場の人々の思いを追って、日経ビジネスの「鉄」記者が自ら駆け回ってきました。人気連載「佐藤嘉彦が読む鉄道の進路」をついに書籍化! 日本全国の鉄道の、現場の挑戦、苦闘、そしてトンネルの向こうを目指す生の声を伝えます。
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