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JR西日本は9月16日、2021年3月期に2400億円の最終赤字に転落するという業績予想を発表した。長谷川一明社長は同年3月時点でも利用者数が前年の6~7割までしか回復しないとし、コロナ前の水準には戻らないという認識を示した。黒字化のためにはコスト削減が不可欠で、利用の平準化による車両や人員の圧縮、運行時間の短縮、地方路線の縮小などが必要と話す。

長谷川一明(はせがわ・かずあき)氏
1981年東京大学法学部卒、旧日本国有鉄道に入社。分割民営化でJR西日本に所属し、2008年に執行役員岡山支社長。12年、取締役兼常務執行役員近畿統括本部長、16年に代表取締役副社長兼執行役員創造本部長となり、19年に社長に就任(撮影:都築雅人)

これまで未定だった21年3月期の業績見通しを2400億円の最終赤字と公表しました。

長谷川一明・JR西日本社長(以下、長谷川氏):1999年3月期に旧国鉄の長期債務処理で特別損失を出し、最終赤字となったことはありますが、営業利益ベースで通年赤字となるのは87年の会社発足以来初めてです。

 鉄道事業は、人々が交流し、移動し、社会経済が動いていくという前提のビジネスです。その根幹がコロナで制限されたことで、非常に厳しい状況に置かれています。これまで社内では、第1四半期が終われば需要が回復するだろうという楽観論から、向こう1年間は回復しないだろうという厳しい見方まで、様々な意見がありました。いずれも感覚的なものでしかなく、最需要期である夏にどれだけ利用があるのかを見極めないと業績予想は出せないと判断しました。残念ながら、利用は期待していたようには戻らなかったので、通年赤字という見通しを立てました。

具体的に需要はどのような状況ですか。

 現在、新幹線や在来線特急などの中・長距離利用は前年の3割程度にとどまっています。関西圏の近距離輸送は6割、定期券は9割近くです。この状況が年内は続くと見ています。9月19~22日の4連休の予約状況が山陽新幹線で前年比5割となるなど回復の兆しはありますが、楽観はできません。回復は年明けからで、ワクチンが国民に行き渡ることで、半年ほどかけて緩やかに増えていくシナリオを想定しています。期末の21年3月時点では、長距離利用は前年の6~7割には戻るという想定です。新たな感染の波が来たり、再び外出自粛が求められたりすれば、そのシナリオは崩れるかもしれません。

最終的にはコロナ前の水準まで戻ると見ているのでしょうか。

 テレワークの普及などで、コロナによる行動変容は一過性のものではないと考えるのが自然です。例えば定期券の利用が100%に戻ることはないでしょう。最終的には全体で9割ぐらいまで戻ればいいところだと考えます。

 コロナ前の営業利益率は10~12%でした。コストが変わらないとすると、利用が9割にとどまると以前のような利益を上げることは難しいです。新たな需要の創造やコスト削減が不可欠になります。

 新たな需要の1つは「3密回避」です。6月から関西圏で通勤時間帯の特急列車に1回300円(税込み、以下同)で乗れる特急券を発売したところ、多くの利用がありました。着席やソーシャルディスタンスの確保に一定のニーズがあることが確認できました。新快速列車の着席サービス「Aシート」(1回500円)も含めて拡大していきたいと考えています。