私鉄大手の小田急電鉄は今、商業施設や街づくりを企画・運営する子会社UDS(東京・渋谷)と個性的な沿線開発を進めている。郊外に住宅を建設して住民を東京都心へと運ぶという、従来の街づくりの在り方を見直す作業だ。3回連載の1回目は、小田急小田原線海老名駅(神奈川県海老名市)の鉄道博物館での取り組みを紹介する。

 新宿から小田急電鉄の小田原線で約50分行くと、神奈川県の県央部に位置する海老名駅(神奈川県海老名市)がある。その駅前で、職住近接型の新たな街「ビナガーデンズ」が完成しようとしている。

 小田急は海老名駅のような1日の平均乗降客数が10万人を超える駅を「集客フック駅」と定義し、沿線の魅力をけん引する役割を目指して開発に力を入れている。ビナガーデンズの開発エリアは約3万5000m2、約322億円を投じる一大プロジェクトだ。すでに2棟のタワーマンションが竣工しており、現在は2022年春の開業に向け、14階建てオフィス棟の建設工事が最終段階に入っている。

 駅の改札口を出て、ビナガーデンズへと向かう入り口に当たる場所に21年4月、鉄道博物館「ロマンスカーミュージアム」がオープンした。新宿と箱根などを結ぶ特急ロマンスカーは小田急の象徴とも言える存在。その歴代車両を展示している。

2021年4月にオープンした「ロマンスカーミュージアム」。歴代の車両を展示する(写真:古立康三)
2021年4月にオープンした「ロマンスカーミュージアム」。歴代の車両を展示する(写真:古立康三)

 駅前の一等地に鉄道博物館をつくった理由について、担当した小田急の荻本周平課長は長期的なファンづくりのためだと語る。「ロマンスカーを通じて小田急線の魅力を知ってもらう。特に子供たちは将来、小田急線の利用客になってもらえるかもしれない。ビナガーデンズの中心となる施設として、沿線の魅力を高める効果を期待している」

 コンセプトは「子供も大人も楽しめる鉄道ミュージアム」。これまでの鉄道博物館は、鉄道ファンのための文化施設のようなものか、子供が楽しめる遊び場のようなものか、両極端になりがちだった。そうではなく、ファミリー層が訪れても「大人が付き添いだけにならない」(荻本氏)、今までの博物館とは一線を画す展示を目指した。

鉄道の素人が企画・運営

 鉄道の博物館は、鉄道の関連会社や団体が運営するのが一般的だ。さいたま市の「鉄道博物館」はJR東日本傘下の公益財団法人、東日本鉄道文化財団が運営している。名古屋市の「リニア・鉄道館」はJR東海の直営だ。

 しかしロマンスカーミュージアムは、企画から運営まで、鉄道の素人に任されることになった。それがUDSだ。小田急が15年に子会社化した。館長として小田急からUDSに出向している1人を除き、運営スタッフで鉄道に詳しい人材はいない。

続きを読む 2/5 コーディネートの会社という立ち位置

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