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東急は7月15日から、東急線各駅の券売機でスマホ決済「LINE Pay」に現金チャージできるサービスを始めた。ICカードの普及で利用頻度が減っている券売機の有効活用に加え、そこにはもう1つの狙いがあった。

券売機を使い、LINE Payに1000円単位でチャージができる

 東急は7月15日から、こどもの国線を除く東急線各駅の券売機でスマホ決済「LINE Pay」に現金チャージできるサービスを始めた。ICカードの普及で利用頻度が減っている券売機の有効活用に加え、釣り札の補充の手間を減らすという一石二鳥を狙った新事業だ。

 「駅の改良工事に携わる中で、ICカードの普及で券売機の利用者が減っていることに気づいた。そこで券売機を活用した決済事業ができないかと考えた」。東急のフューチャー・デザイン・ラボで券売機活用新決済事業のプロジェクトリーダーを務める八巻善行氏は、こう話す。東急の社内起業家育成制度に手を挙げ、17年に第3号案件として採用された。

 東急線の券売機は88駅に330台もある。ピーク時から比べると半減しているが、現金がなくならない限りゼロにすることはできない。鉄道会社にとってはコストとなる“お荷物”を、決済手数料を稼ぐものに変えようという取り組みだ。

 八巻氏の発案が第1弾として実ったのが19年5月に始めた「キャッシュアウト(銀行預貯金引き出し)」だ。横浜銀行の「はまPay」、ゆうちょ銀行の「ゆうちょPay」でスマホ画面にQRコードを表示させ、券売機のコード読み取り部にかざすことで銀行口座から現金を引き出せる。券売機を銀行ATM代わりに使うという発想だ。コストのかかるATMを削減したい銀行側のニーズと合致。利用者が出金手数料を支払い、東急はその一部を得られる。「セキュリティーのため詳細な利用件数や金額は話せないが、日常的に利用されている」(八巻氏)という。

 今回スタートしたLINE Payへの現金チャージサービスは、券売機のディスプレーに表示されたQRコードをLINEアプリでスキャン。現金を投入すると、その額がLINE Payの残高に反映される。入金手数料のユーザー負担はないが、LINE Pay(東京・品川)から東急へ手数料が支払われる。

 LINE Payで東急券売機チャージ プロジェクトマネージャーを務める藤平賢人氏によると、LINE Payでは銀行口座からのチャージが中心。クレジットカードからのチャージは「Visa LINE Payクレジットカード」(三井住友カード)のみとなっている。クレジットカードでチャージされると、3%程度の決済手数料をカード会社に支払わなければならないとされる。銀行口座からの引き落としと比べるとコストが割高になるため、自社の提携カードに限定しているようだ。

 ただ、銀行口座からにせよ、クレジットカードからにせよ、事前に口座情報を登録しておく必要がある。スマホ決済を使いたいと思い立ったときにすぐチャージできる現金チャージも、一定のニーズがあるという。コンビニでは、セブン銀行ATM、ローソンとファミリーマートのレジでチャージを受け付けている。ここに東急線の駅券売機が加わることになる。

 キャッシュアウトでも現金チャージでも、東急は手数料という新たな収入を見込める。しかし実はもう1つ、隠された狙いがある。