鉄道各社の2022年3月期決算は、大手民鉄の大半が黒字転換した一方、JR九州を除くJR各社は2期連続の最終赤字に沈んだ。全体に占める比率が高い鉄道事業の赤字が足を引っ張った形だ。乗客数が新型コロナウイルス前の水準には戻らないとみられるなか、鉄道事業の固定費削減は急務。西武ホールディングスは、他社からの中古車両導入に踏み切る。大手民鉄では異例となる取り組みの背景には何があるのか。

 「黒字必達ということで全社挙げて取り組んだが、残念ながら2期連続の最終赤字となった」。JR東日本の喜㔟陽一副社長は、949億円の最終赤字となった22年3月期決算について、こう無念そうに話した。JRグループで最終黒字に転換したのはJR九州(純利益は132億円)だけ。一方、大手民鉄16社は、東京メトロと京成電鉄を除いて黒字転換した。

 分かれ目は、新型コロナウイルス禍による鉄道事業の赤字を流通や不動産など別の事業で埋められたかどうかだった。大手民鉄16社の営業利益は合計で1221億円だったが、鉄道事業に限ると306億円の営業赤字。鉄道事業が黒字転換したのは、東武鉄道、小田急電鉄、近畿日本鉄道、京阪電気鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道の6社にとどまる。

 キャッシュカウ(安定収益源)であった鉄道事業が、コロナ後は一転して弱みになっている。設備投資の抑制などの緊急避難的な対応も限界に近付いており、鉄道各社は固定費を下げる事業構造改革を打ち出し始めた。コロナ禍が終わっても、利用者はコロナ前の9割程度までしか回復しないという見通しがある。コロナ前の利益水準に戻すためには、固定費を1割程度下げる必要がある。

 5月12日に開かれた西武ホールディングス(HD)の決算会見。説明資料を繰る記者たちの手が一様に止まったページがある。「新造車両に限らず、環境負荷の少ないサステナ車両の導入」と書かれていたからだ。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り3745文字 / 全文4559文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「佐藤嘉彦が読む鉄道の進路」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。