約1年2カ月ぶりに運行を再開したJR西日本の豪華寝台列車「TWILIGHT EXPRESS瑞風(みずかぜ)」。前回の記事ではコロナ対策により、さまざまな負担が発生したことを紹介した。それでも定員28人の特別な列車を走らせる背景には、何があるのだろうか。

運行を再開した瑞風には20人近いクルーが乗り込んでいる
運行を再開した瑞風には20人近いクルーが乗り込んでいる

 手厚い接客を売りにする瑞風には、20人近いクルーが乗り込んでいる。そのほとんどはJR西の子会社で飲食事業や車内販売を担当するジェイアール西日本フードサービスネットの所属だが、2人だけJR西の社員がいる。

 1人は列車の中でのサービスを統括する最高責任者「列車長」だ。JR西の本社にある「瑞風推進事業部 列車企画(品質・オペレーション管理)」に属する6人が、月1~2回のペースで乗務している。

 本社でサービスを立案するだけでなく「実際に現場に出て、お客様と直接対話し、サービスの改善につなげる」と列車長の平田壮輔氏は言う。乗務が終わる度に、クルー全員で振り返りのミーティングを開き、乗客の反応などを集約する。早ければ次の列車からサービス内容を微修正することもある。

列車長の平田壮輔氏。大阪環状線などの車掌から、社内公募で瑞風の列車長に抜てきされた
列車長の平田壮輔氏。大阪環状線などの車掌から、社内公募で瑞風の列車長に抜てきされた

 乗客の声を大きな改善につなげた例としては、今年9月に予定している運行経路の見直しがある。新大阪を起点に山陽本線・山陰本線を2泊3日で周遊するコースの経路だ。

 これまでは1泊目の夕方から翌朝にかけて、山陽本線を岡山駅から本州最西端の下関駅(山口県)まで走り、山陰本線に入って宍道駅(島根県)へと走行。その距離は671.4kmに及び、夜通し走り続けていた。「往年の寝台列車をほうふつとさせる」という声がある一方、「走行中の音や振動が気になって眠れない」という意見も多く寄せられていた。

 そこで9月からは下関駅まで行かずに手前の新山口駅で山口線に入って日本海側に抜け、益田駅(島根県)から山陰本線を走るようにショートカットすることにした。140km近い短縮となり、走行時間は少なく済む。その分、駅に長時間停車させることで、静かな環境で眠れるようになる。

優秀な技術職が接客をこなす

 列車に乗り込むもう1人の社員は「テクニカル・サービスクルー」だ。もっとも、その存在に気づく乗客は少ないかもしれない。普段は、約10人いるサービスクルーの1人として接客しているからだ。

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